需給動向 海外 |
乳製品輸出、2015年は低迷も今後は拡大見込み
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米国農務省海外調査局(USDA/FAS)によると、2015年のアルゼンチンの生乳生産量は、前年比1.5%増の1149万6000トンとなった。同国では、同年1〜3月に最大生産州のコルドバ州および第2位のサンタフェ州が多雨に見舞われたほか、第3位のブエノスアイレス州も熱波の影響で放牧環境が悪化したものの、濃厚飼料を補助的に給与する量を増やしたことで結果的に生乳生産が増加した。
一方、アルゼンチン国家統計院(INDEC)によると、同年の主要乳製品の輸出量は軒並み減少した(表4)。フェルナンデス前政権では、牛乳・乳製品について2007年から輸出登録制度(ROE BLANCO)を導入し、国内需給の逼迫を招かないよう、輸出に際して数量、輸出先などの事前登録を義務付けて政府が実質的に輸出を規制していた。これにより、乳業メーカーの輸出機会は損なわれ、酪農家の生乳増産意欲が減退し、同国の酪農業はポテンシャルを発揮できずにいた。
マクリ新政権は輸出振興に転換
同国では2015年12月10日、政権交代が実現し、マクリ新大統領が誕生した。同政権では事前の公約通り、輸出主導型への政策転換を進めている。
酪農政策では、生乳生産を早急に増やし、乳製品輸出の拡大により外貨獲得につなげるとの意向を有しており、生産振興策として酪農家への直接補助金を緊急的に設け、2016年1〜3月の間、全ての酪農家を対象に、生乳1リットル当たり0.4アルゼンチンペソ(3.1円:1アルゼンチンペソ=7.7円)の補助金を1戸当たり1日3000リットル(1200ペソ(3720円))を上限として交付した。これにより、搾乳牛200頭以下の中小規模酪農家の生産意欲が直接的に後押しされるとみられる。こうした中、3月30日に牛乳・乳製品の輸出の透明性および公平性を回復すべく、ROE BLANCOが廃止された。
2016年の生乳生産は微増見込み
USDA/FASが2015年12月に発表した「Dairy:World Markets and Trade」によると、2016年のアルゼンチンの生乳生産量は、飼料作物の豊作を受け、前年比1.3%増の1165万トンと微増を見込んでいる(図26)。年率30%とされるインフレにより人件費や生産資材費などが上昇した影響で、小規模酪農家が廃業し乳牛頭数が減少している面はあるものの、政権交代により酪農政策が大きく転換し、増産や輸出意欲も拡大していることを受け、今後、上方修正される可能性は高いとみられる。
(調査情報部 米元 健太)
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