需給動向 海外

◆豪州◆

生乳生産量は減少続くも、輸出量は大幅増


2月の生乳生産量、主産地の減少響く

デーリー・オーストラリア(DA)によると、2016年2月の生乳生産量は67万3100キロリットル(69万3300トン相当、前年同月比1.5%減)と、5カ月連続で前年同月を下回った(図21)。2015/16年度(7月〜翌6月)の累計(7月〜翌2月)でも693万5900キロリットル(714万4000トン相当、前年同期比0.7%減)と前年同期を下回っている。



減産は、豪州の生乳の約7割を生産するビクトリア(VIC)州の主産地を要する同州西部の生産量が、乾燥が続いたことにより、前年同月比9.0%減とかなりの程度減少したことが響いたとみられる。

豪州気象局が発表した向こう3カ月の気象見通しによると、降水量については、2015/16年度の牧草生育に悪影響を与えたエルニーニョ現象がようやく終息に向かい、平年並みを上回るところもあるとしている。しかしながら、季節的に生乳生産量のピークを既に過ぎていることから、2015/16年度の生乳生産量への影響は小さいとみられる。

1月の乳製品輸出量、大幅増に転じる

DAが公表した2016年1月の主な乳製品の輸出量は、以下の通り、4品目とも増加し、バターを除く3品目は、前年同月比2割以上の大幅増となった(図22)。



・脱脂粉乳 2万446トン(前年同月比22.6%増)

・全粉乳    7053トン(同45.0%増)

・バター    3462トン (同3.6%増)

・チーズ  1万6092トン(同44.9%増)

4品目全てが前年同月を上回ったのは、2015年6月以来7カ月ぶりとなる。品目別に見ると、脱脂粉乳は、ベトナムやマレーシア、シンガポールといった東南アジアの堅調な加工向け需要を受け、また、全粉乳は、中国向けが前年同月の約3倍に増加したことを受け、それぞれ増加に転じた。バターとチーズは、米国の国内需要の高まりを受け、豪州産の輸入が増加したためとみられている。

最大手乳業メーカー、国内最大規模の工場を新設へ

豪州最大の乳業メーカーであるマレーゴールバン(MG)社は2016年3月15日、VIC州南西部、メルボルンから西へ約300キロメートルのコロイトに3億豪ドル(264億円:1豪ドル=88円)を投じて栄養粉末の製造工場を建設すると発表した。年間100万キロリットルの生乳から4万5000トンの栄養粉末を製造可能な乾燥設備を導入する計画で、実現すればMG社の豪州国内の工場としては最大規模となる。

また、MG社は、工場建設の発表と併せて、インドネシアの栄養食品メーカーKALBE社および米国の栄養食品メーカーMead Johnson Nutrition(MJN)社の2社と、それぞれ栄養粉末の供給契約を締結したと発表した。MG社は、詳細を明らかにしていないが、契約期間は長期にわたるとしており、乳製品国際価格が低迷を続ける中、より付加価値を高めた製品の比重を高めていくとみられる。

MG社は、KALBE社との契約について、成長を続けるアジア市場に高品質な栄養粉末を提供する布石となるとしている。また、MJN社との契約については、MG社の乳製品製造技術と、MJN社の乳幼児向け高栄養価粉末の製造能力の相乗効果が期待できるとしている。

(参考)供給契約締結の相手方について

KALBE社:

インドネシアの大手製薬会社。国内シェアの約2割を占める。製薬事業以外にも、医療サービス、栄養食品、流通といった多くの事業を手掛けており、栄養食品事業では、主に栄養ドリンクや健康飲料を製造している。

MJN社:

米国の乳幼児向け粉ミルク製造会社。同社のブランドである「Enfamil」は国内のほか南米やEU、東南アジア市場にも展開しており、海外6カ国に粉ミルク製造工場を有している。

 

(調査情報部 竹谷 亮佑)


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