需給動向 海外

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続く生乳出荷量の増加、乳価の低迷


生乳出荷量は10カ月連続前年超

欧州委員会によると、2016年1月の生乳出荷量(EU28カ国)は、前年同月比5.2%増の1266万トンとなった(図19)。生乳出荷量は、2015年4月に生乳クオータ制度が撤廃されて以降、10カ月連続で前年同月を上回っている。



加盟国別に見ると、2015年に生乳出荷量を大きく増やしたオランダが、前年同月から16万トン増の121万トン(前年同月比15.5%増)と引き続き増加した。オランダは、EUで最も増産傾向にあり、EUの増産をけん引している。そのほか、2015年にオランダに次いで増産したアイルランドも、前年同月から2.3万トン増の14万トン(同19.5%増)と引き続き増産を強めている。

生乳取引価格は18カ月連続前年割れ

欧州委員会によると、2016年2月の平均生乳取引価格(EU28カ国)は、前年同月比7.8%安の100キログラム当たり29.34ユーロ(1キログラム当たり37.85円:1ユーロ=129円)となり、クオータ廃止以降の最安値を更新した(図20)。同価格は、生乳出荷量が増加基調で推移する中、世界的な乳製品需給の緩和も相まって、低迷が長期化している。



脱脂粉乳の公的買入、3カ月で上限数量の半数に

EUの脱脂粉乳公的買入は、2016年に入り、ベルギーから2万2743トン、ドイツから1万9070トン、フランスから1万7405トン、ポーランドから1万6805トンなど計13カ国から買入申請があり、申請量は同年3月31日時点で10万9000トンと買入上限数量の半数に達した。

EUの脱脂粉乳とバターの公的買入は、各加盟国の卸売価格が、公的買入価格(脱脂粉乳は100キログラム当たり169.80ユーロ(2万1904円)、バターは同221.75ユーロ(2万8606円))を下回った場合、当該国の機関が、製造業者または取扱業者の申請に基づき同価格で買い入れる。EU全体で上限数量が定められ、2016年については当初、脱脂粉乳10万9000トン、バター5万トンが上限数量と定められていた。

欧州委員会は、脱脂粉乳の買入申請量が、年初からの3カ月で前年同期のEUの脱脂粉乳製造量(34万5000トン)の3割程度となる当初の上限数量である10万9000トンに達するなど、需給緩和が深刻となったのを受け、同年3月14日に特別追加支援措置として、脱脂粉乳とバターの公的買入の上限数量を21万8000トン、10万トンへの引き上げを発表したばかりだが、買入対象期間の4分の1が経過した段階で、早くも上限数量の2分の1が消化されることとなった。

脱脂粉乳のEU平均卸売価格は、直近の3月28日の週で前年同期比20%安の100キログラム当たり164.16ユーロ(2万1177円)と公的買入価格を下回っている。バターの同価格は、同261.34ユーロ(3万3713円)となっており、脱脂粉乳同様に低迷が続くが、公的買入価格は上回っている状況にある。

欧州委員会は、現在のEU農畜産業の危機的状況に対する支援策の一つとして、同年1月末に脱脂粉乳とバターの民間在庫補助(PSA)の実施期間を延長しており、市場改善のため、PSAと公的買入を並行して継続実施している。なお、公的買入による在庫は需給状況を判断して放出することとなっているが、当面の需給はそのような状況にはなく、欧州委員会のホーガン農業・農村開発担当委員は、乳製品価格のさらなる下落を招かぬよう「決して市場をゆがめるような放出はしない」との発言を繰り返している。

(調査情報部 大内田 一弘)


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