需給動向 海外

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2015/16年度の生乳生産量、4%程度減少の見込み


生乳生産量、2月は増加に転じるも年度累計では減少

ニュージーランド乳業協会(DCANZ)によると、2016年2月の生乳生産量は196万6000トン(前年同月比5.6%増)と、2015年7月以来7カ月ぶりに前年同月を上回った(図23)。



ニュージーランド(NZ)最大手乳業メーカーのフォンテラ社によると、この増産は、うるう年により前年よりも1日多かったためとしている。乳製品国際価格の下落による乳価の低迷から、酪農家の生産意欲は減退傾向にあるとされていることから、3月以降は再び生乳生産量が減少に転じるとみられている。

フォンテラ社が発表した、2015/16年度(6月~翌5月)の、2月までの累計集乳量は、前年同期比3.4%減と減少傾向にあり、中でも乾燥状態が続いた北島では同5.5%減となった。同期間の累計生乳生産量は1764万3000トン(前年同期比1.8%減)と、依然として前年を下回っており、同社は、2015/16年度累計では、前年度比4%程度の減少を見込んでいる。

2月の乳製品輸出量、全粉乳を除き増加

NZ統計局(Statistics NZ)によると、2016年2月の主な乳製品の輸出量は、以下の通りとなり、全粉乳を除いて、前年同月を上回る結果となった(図24)。



・脱脂粉乳 4万7489トン(前年同月比26.7%増)

・全粉乳  11万3534トン (同6.9%減)

・バター  3万8452トン(同33.2%増)

・チーズ  3万4116トン(同41.4%増)

品目別に見ると、脱脂粉乳は、国際相場の下落に伴う東南アジアからの需要の回復、バターは、中東や北アフリカの需要拡大、チーズは、日本向けと豪州向けがそれぞれほぼ倍増したことが、それぞれの増加の要因とみられる。一方、全粉乳は、中国向けが2割近く増加したものの、在庫を抱える中東各国からの需要が落ち込んだため減少したとみられている。

乳製品国際価格、回復には時間がかかるとの見方

2016年3月15日に開催された乳製品国際価格の指標とされるグローバルデーリートレード(GDT:フォンテラ社主催の電子オークション、月2回開催)の1トン当たり平均取引価格は、以下の通りとなった(図25)。



・脱脂粉乳 1731米ドル
(20万円:1米ドル=114円、前年同期比36.6%安 、前回比3.9%安)

・全粉乳  1971米ドル
(22万円、同32.7%安、同0.2%安)

・バター  2733米ドル
(31万円、同23.1%安、同2.8%安)

・チーズ  2441米ドル
(28万円、同22.0%安、同3.5%安)

いずれの品目も、前回(3月1日開催)結果から下落したが、全粉乳は比較的小幅な下落となった。これは、脱脂粉乳やバター、チーズのEUにおける供給増が要因とされる。

今後の見通しについては、乳製品国際価格の低迷が続く中、実需者が十分に乳製品在庫を確保しているとみられることから、主産地のNZで減産傾向にある全粉乳を除き、需要の回復には時間がかかるとみられている。このため、NZ国内では、2016/17年度の生産者支払乳価も引き続き低調に推移するとの見方が、早くも出始めている。

フォンテラ社、2015/16年度中間期決算を発表

フォンテラ社は2016年3月23日、2015/16年度の中間期決算を発表した。これによると、純利益は4億900NZドル(327億円:1NZドル=80円、前年同期比123.5%増)と大幅に増加し、消費者向け乳製品部門の税引き後純利益は倍増となった。不均衡な乳製品需給に加え、NZドル高で推移する為替相場が乳業メーカーにとってマイナスに作用する中、安価な乳価(原料価格)を生かし、付加価値の高い乳製品の製造を強化したことで、業績の大幅改善につながったとみられている。

これを受け、2015/16年度の生産者への配当金(注)は1株当たり40NZセント(32円)となり、このうち、2016年4月に生産者に支払われる中間配当については、前年度の倍となる同20NZセント(16円)を予定している。

(注) 通常、フォンテラ社へ生乳を出荷する生産者は、生乳出荷実績に応じてフォンテラ社の株式を取得する(乳固形分1キログラム に対して1株)。取得した株式に対する配当金は、売上から経費として差し引かれる額であるため、通常、フォンテラ社の売上高が増加すれば、これに伴って配当金も増加するとされている。
 2015/16年度の配当金は、1株当たり40NZセント(32円)となり、うち20NZセント(16円)は4月に、残りの20NZセント(16円)は、10NZセント(8円)ずつ2回に分けて、それぞれ5月と8月に支払われるとしている。

(調査情報部 竹谷 亮佑)


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