調査・報告 畜産の情報 2016年5月号
調査情報部
当機構では、消費者を対象に牛乳・乳製品の消費動向などに関する調査を毎年度、実施している。 白もの牛乳類の飲用頻度は、減少傾向が続いていたが、平成27年度の調査結果では、「ほぼ毎 日飲む」が43.1%(前年度比2.6ポイント増)と8年ぶりに前年度より増加した。「全く飲まない」 の割合は18.1%(同0.5ポイント減)となった。
食べる頻度では、チーズは「週に1日以上食べる」が41.9%(同2.4ポイント増)、ヨーグル ト「週に1日以上食べる」が59.0%(同1.9ポイント増)となり、ともに増加傾向にある。
本調査は、全国の消費者に対して、牛乳・乳製品の消費・購入・嗜好などの基本的な項目の聞き取りを通じ、その消費構造の変化や消費動向を的確に把握し、牛乳・乳製品の消費拡大に向けた取り組みなどに役立つ情報を収集・提供することを目的として、毎年度実施している。
本稿では、牛乳・乳製品のうち、白もの牛乳類(注1)、チーズ、ヨーグルトおよびバターの調査結果を抜粋し紹介する。
なお、報告書の全文および要約版は、当機構ホームページ(http://www.alic.go.jp/joho-c/joho05_000026.html)に掲載している。
また、調査の概要については、本稿の最後で解説する。
(注1)本調査は消費者の視点に立ったものであるため、牛乳の他にも低脂肪乳、無脂肪乳、栄養成分強化牛乳(カルシウム、鉄分、ビタミンDなどを加えたもの)を白もの牛乳類としており、法律や省令上の種類別分類とは異なる。
(1)飲用頻度 〜ほぼ毎日飲む人は43.1%〜
飲み方を問わず、白もの牛乳類を飲む頻度を聞いたところ、「毎日飲む」が34.5%(前年度比1.9ポイント増)、「週に5〜6日飲む」が8.6%(同0.7ポイント増)となった。
この2つを合計した「ほぼ毎日飲む」は、減少傾向が続いていたが、43.1%(同2.6ポイント増)と8年ぶりに前年度より増加した(図1)。
一方、「全く飲まない」は、増加傾向が続いていたが、18.1%(同0.5ポイント減)と前年度より減少した。
「ほぼ毎日飲む」を年代別に見ると、男女とも中学生が高く男子中学生は80.0%(同2.5ポイント増)、女子中学生は70.0%(同2.5ポイント増)とともに前年度より増加した(表)。
男性はすべての年代で前年度より増加し、中でも20代と60代はともに前年度より2桁の増加となった。
女性は、20代と60代を除くすべての年代で前年度を上回った。
(2)飲用量 〜1日当たりの平均飲用量は、前年度より増加〜
白もの牛乳類の1日当たりの平均飲用量(注2)は、全体および性別でも男女とも減少傾向が続いていたが、全体は175.1ミリリットル(前年度比6.5ポイント増)、男性は184.3ミリリットル(同7.5ポイント増)、女性は166.2ミリリットル(同5.1ポイント増)とともに前年度より増加した(図2)。
性・年代別では、男女とも中学生が最も多く、男子中学生は304.3ミリリットル(同35.5ポイント増)、女子中学生は215.0ミリリットル(同20.2ポイント増)とともに大幅に増加した。
一方、男性では、60代、70代以上、女性では、10代(中学生を除く)、50代、70代以上は前年度より減少した。
(注2)白もの牛乳類を飲むと回答した者(飲用者)の1日当たりの飲用量の合計を、白もの牛乳類を飲むと回答した者数で除して算出している。
(3)飲み方別飲用頻度 〜飲み方による飲用頻度には大きな変化は見られない〜
白もの牛乳類の飲み方別の飲用頻度は、「そのまま飲む」では、「毎日飲む」と「週に5〜6日飲む」を合計した「ほぼ毎日飲む」は、31.8%(前年度比1.7ポイント増)となった(図3)。
白もの牛乳類をコーヒー、紅茶、ココアなど他の飲み物に入れて、または、牛乳に「他のものを混ぜて飲む」では、「ほぼ毎日飲む」は、24.8%(同0.5ポイント増)となった。
過去3年間の飲み方別の1週間の平均日数を見ると、「そのまま飲む」「他のものに混ぜて飲む」ともに、ほぼ同じとなっている(図3)。
また、「ほぼ毎日飲む」の夏場と冬場の飲用頻度を比べると、「そのまま飲む」「他のものと混ぜて飲む」ともに夏場より冬場が少ないが、「そのまま飲む」は、「他のものと混ぜて飲む」より、季節による変動が大きい(図4)。
(4)飲用シーン 〜トップは引き続き「朝食をとりながら」〜
白もの牛乳類の飲用シーンで最も多いのは、「朝食をとりながら」が44.7%(前年度0.3ポイント減)、2番目は「おやつや間食時」が35.7%(同0.7ポイント増)、3番目は「のどが渇いた時」が22.8%(同1.1ポイント減)となった(図5)。
3年間の比較では、項目ごとに大きな変化は見られず、順位が固定化されている。
また、「のどが渇いた時」「くつろいでいる時」「風呂上り」などは減少傾向となっている。
(5)飲む理由 〜「カルシウムがあるから」「栄養があるから」が引き続き上位にランク〜
白もの牛乳類を飲む理由で最も多かったのは「カルシウムがあるから」が39.8%(前年度比2.2ポイント減)、2番目は「栄養があるから」が33.0%(同3.6ポイント減)、3番目は「おいしいから」が26.6%(同0.2ポイント増)、4番目は「好きだから」が26.5%(同1.6ポイント増)となった(図6)。
3年間の比較では、「カルシウムがあるから」、「栄養があるから」、「健康によいから」などの健康に関する理由が減少傾向となっている。
(6)飲用を阻害する大きな理由 〜牛乳を飲まない理由は、「味にクセがある」「飲んだ後、口に残る」「牛乳を飲むとお腹の調子が悪くなる」「においが嫌い」など〜
白もの牛乳類の「飲用量が減った」、「もともと飲まない」理由として、「あてはまる」または「ややあてはまる」と回答した割合では、最も多かったのは「牛乳は味にクセがある」が37.1%、2番目は「牛乳は飲んだ後、口に残る」が36.0%、3番目は「牛乳を飲むとお腹の調子が悪くなる」が35.5%、4番目は「牛乳のにおいが嫌い」が32.6%の順となった(図7)。これら4つが、牛乳の飲用を阻害する大きな理由となっている。
(7)普段よく飲む飲み物 〜普段よく飲む飲み物は「無糖のお茶飲料」、次いで「コーヒー」「白もの牛乳類」が引き続き5割以上〜
図8に示された項目のうち、普段よく飲む飲み物について複数回答可で質問したところ、最も多かったのは「無糖のお茶飲料」で75.1%、2番目は「コーヒー」で66.9%、3番目は「白もの牛乳類」が52.3%となり、前年度とほぼ同様の結果となった。
また、普段よく飲む飲み物の中から最もよく飲むものをひとつだけ挙げてもらった結果、最も多かったのは「無糖のお茶飲料」で39.9%、2番目は「コーヒー」で27.1%、3番目は「白もの牛乳類」が9.1%となり、こちらも前年度とほぼ同様の結果となった。
(8)牛乳の効果に対するニーズ 〜カルシウムに関連するニーズが高い。健康や美肌、ダイエットも訴求ポイントとして消費量増の可能性〜
図9に示された項目のうち、「白もの牛乳に関してこの半年くらいの間に、テレビや新聞、雑誌などで見たり聞いたりしたもの」はどれかを質問したところ、最も多かったのは「(1)牛乳には、カルシウムやタンパク質など体に必要な栄養素がバランス良く含まれている」で55.6%、2番目は「(2)牛乳に含まれるカルシウムは、骨を丈夫にし子供の身長の伸びを助ける」で46.0%、3番目は「(3)牛乳にはカルシウムの吸収を助けて骨粗しょう症を防ぐ成分が含まれている」で45.1%となった。
また、「そういう良い効果があるなら牛乳を飲んでもよい」と思うものはどれかを質問したところ、最も多かったのは「(3)牛乳にはカルシウムの吸収を助けて骨粗しょう症を防ぐ成分が含まれている」が32.4%、2番目は「(1)牛乳には、カルシウムやタンパク質など体に必要な栄養素がバランス良く含まれている」で32.3%、3番目は「(5)牛乳のカルシウムは魚や野菜のカルシウムよりも体に吸収されやすい」で27.8%となった。
全般的に、カルシウムなど栄養に関連する項目の評価が高くなっている。
また、「(8)牛乳に含まれる乳糖は腸内細菌のバランスを改善し、有害物質の発生を防ぐ」、「(10)牛乳の良質なタンパク質やビタミン類は、ハリやツヤのある肌をつくる」、「(11)牛乳は血糖値の上昇がゆるやかなので、ダイエット効果がある」、「(12)牛乳を朝飲むと、体温が上がり体が目覚める」などの効果は、普段は見聞きする機会が少ないが、効果に対するニーズがあるので、これらを訴求することにより、牛乳の消費量が増える可能性がある。
(1)摂取頻度 〜チーズを週に1日以上食べる人は41.9%〜
日頃、チーズを食べる頻度として、「週に1日以上食べる」が41.9%(同2.4ポイント増)となり、おおむね増加傾向にある(図10)。
(2)チーズを使った料理の摂食実態
この1カ月間にチーズを使った料理を食べた割合は、71.3%(同5.5ポイント増)となり、22年度以降、初めて70%を上回った(図11)。
また、この1カ月に食べたチーズを使った料理で最も多かったのは、ピザが57.3%(同2.3ポイント減)、2番目はグラタンで39.0%(同1.0ポイント減)、3番目はパンで30.4%(同1.5ポイント減)であった(図12)。
3年間の比較では、項目ごとに大きな変化は見られず、順位が固定化されている。
(3)購入時の意識 〜国産志向は45.3%を占める一方、生産国を意識しないが52.0%〜
普段チーズ購入時に意識することは、全体では「国産のチーズを購入するようにしている」が45.3%、「生産国は意識していない」が52.0%、「外国産のチーズを購入するようにしている」が1.6%となった(図13)。
年齢が高くなるほど、「国産のチーズを購入するようにしている」との回答が多くなり、男性の70代以上では61.9%、女性の70代以上では70.8%となった。
(1)摂取頻度 〜ヨーグルトを週に1日以上食べる人は約6割〜
日頃、ヨーグルトを飲食する頻度として、「週に1日以上食べたり飲んだりする」が59.0%(同2.0ポイント増)となり、増加傾向にある(図14)。
(2)タイプ
タイプ別では、「プレーンヨーグルト」が50.3%(同0.8ポイント増)、「加糖ヨーグルト」が35.8%(同0.3ポイント増)、「果肉フルーツ入りヨーグルト」が31.3%(同0.1ポイント減)となった(図15)。
3年間の比較では、「プレーンヨーグルト」が増加傾向にある。
(1)購入頻度
バターの購入頻度は、「数カ月に1回位」が27.4%、「月に1回位」が21.9%、「2週間に1回位」が6.5%となった(図16)。
(2)購入意識
普段バター購入時に意識することで最も多かったのが「価格」で48.3%、2番目は「製造メーカー」の38.8%、3番目は「大きさや量」の28.5%となった(図17)。
(3)使い方
バターの使い方で最も多かったのが「料理に使う」で74.1%、2番目は「パンに塗る」の58.5%、3番目は「お菓子作りに使う」の22.2%となった(図18)。
(4)代わりに使うもの
バターがない時にバターの代わりに使うものとしては、最も多かったのは「マーガリン」で66.0%、2番目は「オリーブオイル」の29.8%となった。また、「バター以外は使わない」が14.6%となった(図19)。
これまで中学生以上の白もの牛乳類の飲用量・飲用頻度は低下傾向が続いていたが、平成27年度は8年ぶりに歯止めがかかり、飲用量は25年度の水準を上回った。
また、「毎日飲む」割合も増加し、「そのまま飲む」や「混ぜて飲む」でも「毎日飲む」割合が増加傾向となっている。
白もの牛乳類の飲用シーンや飲用理由の変化を見ると、朝食とおやつや間食時が引き続き主なシーンであるが、「のどが渇いた時」「風呂上がり」といったシーンでの飲用は減っている。
また、飲む理由では「カルシウムがあるから」「栄養があるから」「健康に良い」といった意識は弱くなっている一方、「おいしいから」「好きだから」「他のものと混ぜたりする」が前年度と比べて微増となっている。
牛乳・乳製品関連の消費拡大には、おいしいというだけでなく、さまざまな飲料と一緒に、あるいは料理に使えるといった長所を生かして多様なスタイルを提案することが重要と思われる。
また、これまでのカルシウムや栄養豊富といった評価以上に「ハリやツヤのある肌をつくる」や「ダイエット効果」など、まだあまり知られていないが効果が消費者、特に主たる購入層である女性の関心を呼ぶ健康・美容面での良さを訴求することが重要と思われる。
この調査結果が、酪農乳業関係者にとどまることなく広く活用され、牛乳・乳製品の消費拡大を推進する上で参考になることを期待する。
また、調査にご協力いただきました皆さまに深く感謝しますとともに、併せて御礼申し上げます。
1.調査方法
留置併用訪問面接法(注3)により、本人が調査票に回答。
(注3)留置法とは、対象者を訪問してその場では調査票の記入を依頼するだけとし、その後、再訪問して記入済み調査票を回収する手法である。
訪問面接法とは、調査員が対象者を訪問して、直接回答を聞き取る手法である。 調査員が回答を確認しながら質問を進めていくので、回答抜けがなく、質の高い結果を得ることができる。
本調査では、留置法と訪問面接法を併用している。
2.調査対象
全国の中学生以上の男女個人 3200人(回収ベース)
3.調査地域とサンプル数
回収サンプルの地域別内訳は下記の通り(沖縄除く)。構成比はウェイト集計(注4)後の値。
(注4)アンケートなどで得られたサンプルが全体(母集団)の構成比と異なる場合に、回収された属性ごとの抽出率や 回収率の違いを補正し、全体の構成比に合わせるように重みを付けて集計する方法。
4.抽出方法(エリアサンプリング)
平成22年度国勢調査時の母集団人口に基づき、地域(9分類)と都市規模(4分類)により層化し、調査地点数を比例配分する。各層ごとに大字・町丁目の該当人口に応じて、調査地点を抽出した。
各調査地点において、世帯(居住者のいる一般世帯住宅住戸)を系統抽出した。
世帯から個人の抽出は、性・年齢別の割当に従って、訪問世帯において対象者条件に適合する個人を抽出した。
5.サンプル設計およびウェイト集計について
平成19年度まで、地域(9分類)・都市規模(5分類)および性・年齢別の人口構成を反映したサンプル設計を行ってきた。そのため、若年層においては、回収サンプル数が少なく、性・年齢別の分析を行うには十分ではなかった。
20年度から、性・年齢の層別にも十分な分析を行なえるよう、性・年齢別に200サンプルずつを均等に割り当てるクォータ法(注5)により調査を実施しているため、本年度調査では、回収サンプル構成は、母集団である平成22年度国勢調査人口を反映していない。そのため、サンプルごとに人口構成に応じたウェイト値を与えて集計し、サンプル構成を補正した。本報告書で記載しているサンプル数は実際に回収されたサンプル数であるが、構成比(%)はウェイト集計後の値である。
(注5)母集団を性別、年齢層、階層などの組み合わせにより分類し、その各組から母集団に比例するサンプルを選出する方法。
6.調査期間
平成27年10月24日〜11月29日
7.データを読む上での注意点
・単一回答(択一式選択肢)の場合、回答率の合計が100.0%になるべきところで、そうならない箇所がある。
これは各回答率を小数点以下第2位で四捨五入しているためである。
・表示されているサンプル数は実際の回収サンプル数、構成比(%)はウェイト集計後の数値である。
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