需給動向 国内 |
平成29年9月の牛肉需給を見ると、生産量は2万6318トン(前年同月比0.3%減)と前年同月並みとなった。品種別では、和牛が1万1305トン(同0.9%増)と前年同月をわずかに、交雑種が酪農家での黒毛和種交配率の上昇を背景に6880トン(同8.2%増)とかなりの程度増加したものの、乳用種が7838トン(同7.5%減)と前年同月を下回った。
輸入量は、冷蔵品が6カ月連続で2万トン超えの2万5199トン(同31.5%増)と、冷凍品も3万5612トン(同54.2%増)と前年同月を大幅に上回ったことから、全体では6万910トン(同44.0%増)となった。
推定出回り量は、前年同月を大幅に上回る8万3873トン(同18.0%増)となり、推定期末在庫は前月から3118トン積み増したものの、11万9146トン(同4.6%減)と21カ月連続で前年同月を下回った(農林水産省「食肉流通統計」、財務省「貿易統計」、農畜産業振興機構調べ)。
平成29年度上半期(4〜9月)の生産量は、16万466トン(前年同期比0.6%増)とわずかに増加した(図1)。品種別では、乳用種が4万6665トン(同5.6%減)と減少した一方、和牛は6万9764トン(前年同期同)と前年同期並みとなり、交雑種は4万2040トン(同10.0%増)と増加した。
平成29年度上半期の輸入量は、32万2279トン(前年同期比16.4%増)と大幅に増加した。うち、冷蔵品は14万1458トン(同16.5%増)、冷凍品も18万448トン(同16.4%増)と前年同期をいずれも大幅に上回った。輸入相手国別に見ると、最大の輸入相手国である豪州産は、冷蔵品が6万2779トン(同0.2%増)と前年同期並みとなった一方、冷凍品が10万749トン(同14.6%増)とかなりの程度増加した。次いで輸入量の多い米国産は、冷蔵品が7万3064トン(同36.0%増)と大幅に増加したほか、冷凍品も8月1日から関税の緊急措置が発動(関税率50%(通常は38.5%)が適用)されているものの、好調な需要を背景に5万8263トン(同12.4%増)とかなり大きく増加した。豪州産については、牛群再構築の動きがある中でサイクロンなどの災害も発生したことから、4〜5月に出荷頭数が減少し、供給量が減少した。6月以降は、乾燥気候により放牧環境が悪化したことからと畜頭数が増加し、供給量は回復した。米国産は、飼養頭数増により出荷頭数が増加し安定的な供給量があり、バラや肩ロースを中心に需要が増加しているとみられる。
平成29年度上半期の推定出回り量は、46万5150トン(前年同期比9.1%増)とかなりの程度増加した。うち、国産品は15万8888トン(同0.2%増)と前年同期並みとなった一方、輸入品は30万6261トン(同14.3%増)と前年同期をかなり大きく上回った。国産牛肉の価格が高値で推移する中、量販店などを中心に安価な輸入品の需要が高まっていることがうかがえる。
平成29年9月の推定期末在庫は、11万9146トン(前年同月比4.6%減)と前年同月をやや下回った。うち、全体の9割以上を占める輸入品は、昨年度から在庫を調整する動きもあり、10万8038トン(同5.1%減)とやや減少したものの、国産品は1万1108トン(同0.6%増)と前年同月をわずかに上回った。
このような状況の中、東京市場における平成29年度上半期の枝肉卸売価格は、高値疲れや冷蔵品輸入量の増加などにより、輸入牛肉へ需要がシフトしていることから、和牛や交雑種の下位等級を中心に弱含みとなった(図2)。
(畜産需給部 山神 尭基)