特集:世界の酪農と牛乳乳製品需給をめぐる状況   畜産の情報 2017年12月号


主要国の酪農、牛乳乳製品をめぐる状況について

調査情報部



世界の牛乳乳製品の需要は、新興国を中心に拡大を続けており、世界の生乳生産量も需要の拡大に対応して中長期的に増加を続けている。

世界最大の乳製品輸出国であるニュージーランドは、輸出拡大に向けて生乳生産量を伸ばし、2000/01年度から2014/15年度までに6割以上拡大させてきた。しかしながら、短期的に見れば増減を繰り返しており、最近では、中国の全粉乳輸入が2015年に大きく落ち込んだほか、各国の生乳生産量も増加基調にあったことなどから、世界的に乳製品需給が緩和し、2015年から2016年にかけて乳製品の国際取引価格が低迷したことから生産者乳価が引き下げられ、2015/16年度と2016/17年度の生乳生産量は減少に転じることとなった。

乳製品輸出ではニュージーランドとほぼ並ぶEUの最近の状況をみると、主要な輸出先であったロシアが2014年8月から禁輸措置を講じたことにより、多くの乳製品が行き先を失ったことに加え、2015年3月末の生乳クオータ制度の廃止により多くのEU諸国で増産の機運が高まっていたことも重なり、乳製品需給は大きく緩和した。EU諸国は、中国を中心としたアジアに市場を求め、アジア向け輸出は拡大したものの、EU域内の乳製品価格と生産者乳価が著しく下落したことから、EU委員会は、脱脂粉乳の介入買い入れにとどまらず、生乳生産量を抑制するため、生乳の減産奨励金を急きょ準備し、2016年10月から2017年1月にかけて減産対策を講じたことは記憶に新しい。

また、世界最大の生乳(水牛乳を除く)生産国である米国は、巨大な自国の乳製品市場が拡大を続ける中、生乳生産量も2001年から2006年にかけて3割弱増加し、チーズなど一部を輸入する一方、世界第3位の乳製品輸出国の地位を維持している。

一方、需要に目を向けると、世界の乳製品需要が拡大を続ける中でも新興国も含めてチーズの伸びは目覚ましく、今後のさらなる増加が期待されており、各国ともに付加価値の高いチーズ生産へのシフトを目指している。また、2014年6月23日号のタイム誌に掲載された記事などを契機として、乳脂肪摂取に対する考え方が見直され、欧米を中心にバターなどの乳脂肪の需要が高まり、バターの国際取引価格が高騰するという現象が見られている。しかし、脱脂粉乳は、その反動で余剰となるなど、乳脂肪と乳タンパクの消費バランスに変化が見られており、バターが高値であっても、脱脂粉乳も含めた全体の利益率を考慮すると簡単にはバターを増産できないという声も聞かれる。

このように世界の酪農、牛乳乳製品需給は、刻々とその情勢を変えており、わが国の乳製品の生産や調達にもさまざまな変化が避けられず、こうした世界の情勢を踏まえることは必要であろう。

今号では、世界の主要国の動向と今後の見通しについての報告をまとめて掲載するものであり、酪農、牛乳・乳製品をめぐる世界の現在の動きを理解する一助となれば幸いである。


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