畜産の情報 2018年1月号

新年のごあいさつ

独立行政法人農畜産業振興機構 理事長 宮坂 亘


謹んで新年のごあいさつを申し上げます。

alicの業務につきまして、旧年中は皆さまのご理解とご協力を賜り、厚く御礼申し上げます。

昨年は、梅雨期の九州北部豪雨や秋に日本列島を縦断した台風18号などにより、多くの方が被災されたほか、家畜、農畜産業関連施設にも多大な被害が発生しました。被害に遭われた皆さまに心からお見舞い申し上げます。

alicでは農業者の経営安定を図るため、粗飼料確保緊急対策事業、酪農経営支援総合対策事業(災害緊急支援対策事業および酪農経営安定化支援ヘルパー事業)、肉用牛経営安定対策補完事業(災害緊急支援対策事業)の畜産支援対策を緊急的に実施したところです。

さて、わが国の農林水産業をめぐっては、グローバル化が一層進展する中、昨年も環太平洋パートナーシップ協定(TPP)、日EU経済連携協定(EPA)など、さまざまな動きがありました。

1月に米国大統領に就任したトランプ大統領の下、米国がTPP協定から離脱しましたが、11月には米国を除くTPP署名11カ国により、包括的及び先進的な環太平洋パートナーシップ協定(CPTPP)が大筋合意され、署名に向けた準備が進められています。また、7月にはEUとの間でEPAの大枠合意に至り、12月に交渉が妥結しました。

政府は、これらの動きを踏まえて農林水産業の国際競争力をさらに強化するため、11月24日に「総合的なTPP等関連政策大綱」(平成29年11月24日TPP等総合対策本部)を決定しました。今後、同大綱に基づく対策に係る関連法案の国会審議など必要な手続きが進められると聞いております。

alicとしては、協定発効と同時に施行される牛・豚の経営安定対策事業(マルキン)の法制化および肉用子牛保証基準価格の見直しへ向けて、関係規程の整備、システムの構築など必要な準備を進めているところです。

また、6月には「畜産経営の安定に関する法律及び独立行政法人農畜産業振興機構法の一部を改正する法律」が成立しました。これは、alicが実施する加工原料乳の生産者補給金制度について、生産者補給金の交付対象の拡大などの見直しが行われるとともに、従来の「暫定」措置から恒久的な制度として位置付けられ、本年4月から実施されます。alicとしては、新たな制度に即し、生乳を乳業に直接販売されたり、自ら乳製品を加工販売される酪農家の方々にも生産者補給金を交付するためのシステム改修を進めるとともに、都道府県担当者に対して適切な周知を行うなど、新制度への円滑な移行に万全を期する所存です。

さて、この1年を振り返りますと、肉用牛生産では、全国の肉用牛の子取り用雌牛の飼養頭数(29年2月時点)は、6年ぶりに増加に転じた前年と比べ8200頭増加しました。酪農分野においては、一昨年の夏以降、生乳生産は減少傾向で推移してきましたが、北海道の生産回復に伴い10月の生乳生産量は14ヵ月ぶりに前年同月を上回ったところで、生乳生産の回復に伴う需給の改善が期待されるところです。

肉用牛、乳用牛ともに、生産量は回復傾向にあるものの、生産基盤の強化が喫緊の課題となっていることから、alicとしては、畜産業振興事業を通じて優良繁殖雌牛の増頭や乳用後継牛確保のための取り組みなどに対して引き続き支援して参ります。一方で、国内における乳製品の安定供給を図るため、引き続き、国と連携の上、国家貿易機関としての乳製品の輸入・売渡業務の適切な運用を通じた、バターおよび脱脂粉乳の需給の安定に努めていく所存です。

輸出をめぐる動きとしては、昨年、日本産牛肉の輸出が台湾向けが9月、マレーシア向けが11月に、解禁となりました。特に台湾では牛肉の消費が伸びていることに加え、来日した観光客の間で和牛を使った料理が人気を集めており、輸出拡大への追い風となることが期待されています。牛肉の輸出額は27年の110億円(1611トン)から28年の136億円(1909トン)と年々増加しており、農林水産物・食品の輸出額1兆円の目標達成を掲げるわが国にとって、さらに期待ができる品目の一つと言えます。alicとしましても、このような輸出促進のための取り組みを後押しすべく、輸出関連情報の収集・提供を通じた国内関係事業者の方々に対する側面的な支援を行って参ります。

以上のように、alicは、国の重要な施策を担う機関として、これまでもその時代に求められた役割を果たすべく、農畜産物生産者の経営安定や農畜産物の安定供給を図るためのさまざまな事業を機動的かつ効率的に実施して参りました。本年4月からは、第4期目となる新たな中期目標期間を迎えます。新たな中期目標期間においても、これまでに培ったノウハウなどを生かしつつ、alicに与えられた役割を確実に果たしていきたいと考えております。引き続き皆さまのご理解とご協力のほど、よろしくお願い申し上げます。

本年が皆さまにとって希望に満ちた明るい年となりますことをご祈念申し上げ、新年のあいさつと致します。


				

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