欧州統計局は、 先頃、 95年6月時点におけるEU全体の牛の飼養動向調査を発表し た。 これによれば、 EU15カ国の総飼養頭数は、 わずか0.4%ながら前年同月時点よ り減少した。 国別では、 ドイツ、 アイルランドなど5カ国で前年同月より増加した のに対して、 イタリア、 デンマークなど8カ国は減少した (残り2カ国は増減なし)。 牛のタイプ別の動向では、 肉用経産牛が3.7%増加したのに対し、 乳用経産牛は1.8 %の減少となった。 EUの牛飼養頭数(95年6月) 乳用経産牛 肉用経産牛 合計 前年同月比 ────────────────────────────────── (千頭) (%) ベルギー/ルクセンブルク 672 502 3,304 +1.6 デンマーク 683 120 1,992 -5.4 ドイツ 5,233 663 16,098 +0.5 ギリシャ 204 96 611 - スペイン 1,300 1,536 5,329 +2.4 フランス 4,434 4,210 21,563 -0.1 アイルランド 1,303 1,024 7,140 +1.1 イタリア 2,150 716 7,207 -4.3 オランダ 1,764 91 4,657 -1.3 オーストリア 725 178 2,318 -0.8 ポルトガル 356 232 1,273 -4.5 フィンランド 410 34 1,184 -4.0 スウェーデン 487 163 1,852 - イギリス 2,614 1,800 11,773 -0.5 EU15カ国計 22,384 11,395 86,515 -0.4 ────────────────────────────────── 資料:EUROSTAT 注:数値は暫定値又は推定値ドイツ、 統合後はじめて増加
主要2カ国についてみると、 EU最大の牛飼養国フランスでは、 総飼養頭数の18% を占める乳用経産牛が前年同月より約1%減少したものの、 全体としては、 前年同 月からほぼ横ばいとなった。 第2位のドイツは、 東西統合後、 総飼養頭数が減少する傾向にあったが、 今回の 調査では、 わずか0.4%ながら、 前年同月より増加した。 これは、 昨年から続く肉 用経産牛の増加によるもので、 この傾向は今回の調査で一層顕著なものとなった。 また、 その増加は、 旧東ドイツ地域において著しく、 同地域では前年同月から26% の大幅増となった。 なお、 旧東地域での一戸当たり飼養頭数は約100頭と、 旧西側 地域の48頭を大きく上回っている。20年来の最高水準となったアイルランド
この他の国では、 アイルランドの総飼養頭数が前年同月より1.1%増加し、 ここ 20年来での再高水準となったことが目立っている。 乳用経産牛、 肉用経産牛とも に増加したが、 特に肉用経産牛は前年同月より2. 3%と比較的大きな伸びとなった。 また、 肉用牛と乳用牛の飼養動向が際だった対照をみせたのは、 オーストリアで、 乳用経産牛が前年同月より11. 3%と大幅に減少する一方で、 肉用経産牛は150.2% と逆に大幅な伸びを示した。輸出補助金の削減が牛肉市場への不安定要素
健在の種類別頭数水準からみると、 今後、 次回12月調査では前年同月から約1% の増加、 その後96年にはわずかながら減少に向かうとみられる。 しかし一方で、 ガ ット・ウルグアイラウンド合意の実施にともなう輸出補助金の削減が今年度から実 施されているため、 価格引き下げの圧力を回避するには、 2000年に向けて大幅な牛 肉の生産削減が必要になるとみられている。 特に牛肉の輸出依存度が高いアイルラ ンドや、 ドイツ、 フランスなどでは、 この輸出補助金の削減が、 牛肉市場に対する 大きな不安定要素となっている。
元のページに戻る