タイの鶏肉の需給動向


◇絵でみる需給動向◇

○飼料原料の輸入関税払戻し等を決定



● 輸入関税相当分を払戻し


 タイ大蔵省関税局は、 3月、 冷凍鶏肉の輸出に当たり、 トウモロコシや大豆ミ ール等の飼料原料の輸入関税相当分を払い戻す措置を導入することを決定した。 この輸入関税の払戻しは、 実行上は、 冷凍鶏肉の輸出業者に対し、 輸入飼料原料 の使用状況、 鶏肉生産の生産効率等を総合的に判断した上、 冷凍鶏肉の輸出量に 応じて行われるとされている。

● 鶏肉輸出競争力の回復に期待


 タイでは、 ここ数年、 国内飼料需要の増加と国産飼料原料の不足により、 飼料 価格が大きく上昇し、 鶏肉生産コストを押し上げている。 タイ養鶏協会によると、 今回の措置により鶏肉生産コストは少なくとも3〜5%下がるとされており、 今 後は輸出競争力が回復するとともに、 海外市場において、 中国、 ブラジル等の鶏 肉輸出国との競争条件が改善されると期待されている。  なお、 タイ政府は、 93年から94年にかけても、 飼料原料の輸入に対して課徴金 の徴収を行い、 これを原資として冷凍鶏肉の輸出に対して同様の払戻しを行った (95年以降、 関税割当制度の導入に伴って中止)。 政府は現在、 輸入飼料原料の使 用量、 鶏肉の生産効率等を調査しており、 早ければ1カ月以内に輸入関税相当分 の払戻しを開始するとしている。

● 雛の生産・供給計画を発表


 また、 上記措置とは別に、 タイ農業・協同組合省畜産振興局は、 国内における 雛の生産・供給計画を発表した。 これによると、 同局が主体となって雛の生産施 設を建設・運営し、 年間70万羽の肉用および採卵鶏用雛を生産して、 市場価格よ り安く、 主として中小養鶏企業向けに供給するとしている。 さらに、 雛の安定的 な供給を確保するため、 主に輸入原種鶏に依存していた国内の種鶏生産部門にお いて、 優良な国産原種鶏の作出を進めるとしており、 すでに生産段階での能力検 定を実施しているとのことである。

● 大手養鶏業社の寡占に対抗


 今回、 タイ政府が雛の生産・供給計画を策定した背景には、 ここ数年、 雛価格 の高騰が中小の養鶏業者の経営を圧迫していることがある。 現在、 タイで流通し ている雛の大部分は、 種鶏部門を持つ大手業者によって独占的に供給されており、 雛価格もこれらの大手業者の影響下で高値に誘導されている。 一方、 中小の養鶏 業者は、 高値の雛を購入せざるを得ず、 飼料価格の高騰もあって経営が圧迫され、 生産規模の縮小や生産中止に追い込まれる状況となっている。 このため、 政府畜 産振興局は、 今回の措置により大手養鶏企業が独占する現在の雛市場に風穴を開 け、 中小養鶏企業の経営の安定を図りたいとしている。
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