採卵鶏の飼養規則をめぐって紛糾 (EU)



 スウェーデン政府が、 採卵鶏を飼養する鶏舎 (ケージ) の基準面積について、 

EU規則よりも厳しい基準を定めたことをめぐり、 フィンランドを中心としてEUレ

ベルで紛糾する事態となっている。

● EU基準を大幅に上回る最低基準面積を設定

 スウェーデン政府は、 この1月に動物愛護の観点からとして、 採卵鶏を飼養す るケージの1羽当たりの最低基準面積を600平方センチメートルにすることを決 定し、 この基準を満たしていないケージから生産された鶏卵には、 「スウェーデ ンの生産基準面積に適合しない」 という主旨のパッケージ表示を義務付ける規則 を定めた。 この面積は、 EU規則で定められている最低基準面積の450平方センチ メートルを大幅に上回っていることから、 養鶏農家にとって、 この達成はコスト の面からもかなり厳しいものとなった。

● フィンランドが表示の義務付けに反発

 これに対し、 フィンランドを中心としてEUレベルで問題とされたのは、 新たな 基準面積そのものよりもパッケージ上の表示義務であった。  フィンランド政府は、 このパッケージ表示義務が、 実質的には、 同国からの鶏 卵輸入を制限するために設けられたものであると反発した。 ちなみに、 フィンラ ンドは、 95年のEU加盟以降、 その安価な輸出価格により、 スウェーデンへの輸出 量を飛躍的に拡大させている。 一方、 スウェーデンの鶏卵生産者は、 この輸出を ダンピングであると非難し、 EU委員会に輸入課徴金の設定を認めるよう求めてい た。

● 表示の義務付け規則を撤回

 EU委員会は、 スウェーデンに対し、 今回のパッケージ標示の義務付けは、 域内 における商品の自由な取引を阻害するとして、 何度か警告を発した。 さらに、 ス ウェーデン当局が警告を無視し続けるのであれば、 法的対抗手段を取るとの公式 文書による警告も行った。 この結果、 スウェーデン当局は、 最終的にEU委員会の 警告を受け入れ、 3月に入って表示の義務付け規則を撤回した。  スウェーデン当局は、 今回の規則改正は、 動物愛護の観点から制定したもので、 フィンランドからの輸入を閉ざす目的ではなかったとして、 基準面積については 変えない意向である。 ただし、 スウェーデンの鶏卵生産者は、 パッケージ表示の 義務付け規則だけが撤回されたことにより、 今後、 フィンランドの鶏卵の価格競 争力が、 ますます強まるのではないかとの懸念を抱いている。
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