キャトルケア導入体制に進展の兆し (豪州)





● ISO標準に準拠した品質管理システム

 キャトルケアとは、 豪州における肉用牛の生産段階での品質管理システム(QA) の呼称である。 94年11月の牛肉のクロロフルアズロン残留事件を大きな契機とし て、 豪州肉牛協議会 (CCA) が中心となって導入を決定し、 95年7月には、 品質 管理の国際的標準であるISO9002に準拠した具体的な管理規則が公表された。  この管理規則は、 食肉への農薬などの化学物質の残留、 粗雑な管理による枝肉 や原皮の損傷を未然に防ぐことを目的に、 肉牛生産者に対し、 厳密な飼養管理、 管理状況の記録、 定期的な土壌・飼料管理者の訓練などを求めている。

● 生産者は負担増から導入に消極姿勢

 これまで、 CCAは、 肉牛関係者の集まる主だった会合で、 機会あるごとにキャ トルケア導入の必要性を訴え、 その概要やメリットを説明してきた。 また、 95年 12月には、 キャトルケアの普及組織として 「キャトルケア社」 を設立し、 主要な 食肉関係団体の代表を理事として迎えるなど、 その普及啓もうに努めてきた。  しかし、 生産者サイドは、 農薬残留問題などの苦い経験からQAの必要性は理解 しながらも、 少なからぬコストや労力負担の伴うキャトルケアの導入には必ずし も積極的ではなかった。 特に豪州の牛肉生産の中心であるクイーンズランド州で は、 大規模で祖法的な飼養形態が一般的なだけに、 QA導入に伴うかなりの負担増 を嫌って、 生産者はキャトルケアの全面的な導入に大きな抵抗を示してきた。

● キャトルケア導入を促す動きが表れる

 こうした状況下で、 クィーンズランド州は独自に、 生産者に普及を促すための 措置として、 キャトルケアの中の農薬残留防止にかかる部分を選択的に採用した 形の 「Qケア」 を提示していたが、 CCAは、 先頃、 これをQAへの取り組みの第一段 階とし承認した。  また、 キャトルケアは、 自主的なるがゆえに、 その普及拡大には、 食肉処理加 工業者サイドが生産者にその必要性や利益を具体的に示すことが一つの鍵となっ ていたが、 最近になって、 中堅パッカーのサウスバーネット社が、 良質な原皮に 対するプレミアムの支払いシステムを採用したり、 先頃開催された牧畜業者協会 の会合で、 豪州最大のパッカーであるAMH社のローソン会長が、 2年以内に 「QA 生産者」 からの優先買い入れを行うことを示唆するといった動きが表れている。  このように、 徐々にではあるが、 生産者がキャトルケアを受け入れる条件が整 ってきているといえよう。
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