EUの牛肉の需給動向


◇絵でみる需給動向◇

○EU牛肉市場に供給過剰の重圧


● 反発のみられない牛肉価格


 3月20日、 イギリス政府が牛海綿状脳症 (BSE) に関する新たな見解を発表し てから、 EU牛肉産業にとって 「激動」 の4カ月が経過した。 その間の牛肉消費量 の減少は、 EU平均で11% (年間消費量換算85万トン) にも及ぶとされ、 3月以前 の水準へ回復する兆しはみられない。 これに域外輸出の減少も加わり、 EUの牛肉 過剰は危機的な状況にまで進行しているとさえいわれている。  EU委員会は、 4月以降、 介入買入を再開しており、 その数量は既に23万トン以 上に達している。 しかし、 その間にも牛肉価格は一貫して下落しており、 7月の EU平均の成牛価格 (市場参考価格) でみると、 前年同月より12%、 本年2月より 10%下回っており、 依然として牛肉市況は低迷したままである。

● 現在も続く需要の減少


 BSE問題による影響は、 一定の時間が経過したにもかかわらず、 依然としてEU 域内にじわじわと拡大している。 7月のフランスの成牛価格は、 EU平均の下落幅 を上回って下落した。 これは、 6月にイギリスの科学誌 「ネイチャー」 によって、 イギリス国内で使用禁止とされた牛肉骨粉関連飼料が、 かつて、 フランスに大量 に輸入されていたことが報じられたことによるものである。 それ以降、 フランス の各地の生体市場では、 BSEへの懸念から引き合いが冷え込み、 市場開催が延期 されるものも出ていると伝えられている。  このような消費の減少に伴い、 域内加盟国間の流通量が大きく減少しているほ か、 域外輸出の面でも、 エジプトやアルジェリア等の主要輸出相手国が、 輸入を 事実上禁じているなど、 域内の牛肉輸出国は、 大きな経済的打撃を被っている。

● EU委員会は総合的な需給対策を検討


 域内消費については、 例年、 8月を底に、 秋口から需要期を向かえるため、 一 部には、 今後、 回復に向かうとの楽観的な予測もあるが、 価格上昇をリードする という観点からは、 フランス、 ドイツ、 イタリアなど大国での消費動向がカギと なるものとみられる。  今後、 EU委員会では、 供給過剰対策として、 介入買入数量の上限の引き上げ (本年度分40万トンから72万トンへ、 来年度分35万トンから50万トンへ、 それぞ れ拡大) や、 買入対象となる牛の重量の引き下げなど一連の需給対策を検討する としている。  また、 一方では、 粗放化奨励金の受給要件となっている飼養密度条件の強化 (1.4LU/ha*から1.2LU/haへ)、 雄牛特別奨励金の交付対象頭数の引き下げなど、 生産抑制を狙ったともみえる方策が検討されている。 これは、 共通農業政策の総 合的な見直し検討の中で出ているものであるが、 BSE絡みの需給対策に注目が集 まる中で、 今後議論を呼ぶ可能性もある。 (注:LUは家畜単位で、 6カ月齢以上2歳未満の牛を0.6、 2歳以上の牛を1.0、 羊および山羊は0.15として計算される)
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