タイの鶏肉の需給動向


◇絵でみる需給動向◇

○タイの鶏肉需給


● 生産過剰が懸念される国内市場


 タイ農業協同組合省農業経済局は、 95年から今年5月までの種鶏輸入羽数、 94 年後半から95年にかけての原種鶏の輸入羽数、 その他、 気象条件等を勘案し、 96 年の鶏肉生産の推計を行った。  それによると、 96年のブロイラー生産羽数は、 95年の種鶏輸入羽数が前年の2 倍以上に達したこと、 原種鶏の輸入羽数も約4割増加したこと、 特定疾病の発生 もみあたらないことから、 最終的には、 前年よりも2千万羽 (3%) 増加して、 約6億8千万羽になるとされている。  さらに、 今年に入ってからも種鶏輸入羽数がほぼ昨年並みで推移していること から、 今後、 生産過剰による価格低迷が起こるのではないかとの懸念を表明して いる。  96年上半期のブロイラー価格は、 国内需要の伸びがそれほど高くなかったこと もあって、 既に、 昨年同期より10〜15%も低下している。 このことは、 生産サイ ドにも波及し、 3月の初生ヒナ価格は、 従来より2〜3バーツ低下して、 1羽当 たり約6バーツ (約24円) となった。  その後、 イギリスのBSE騒動でEUの鶏肉需要が高まったことや、 タイ国内の豚 肉価格上昇で消費が鶏肉にシフトしたことにより、 4月にはヒナ価格は回復に転 じた。 しかし、 ブロイラー価格は、 依然として前年並みの低い水準で推移してお り、 回復の兆しはみられていない。

● WTO体制下で輸出の増加に期待


 こうした中、 タイの大手食肉企業であるサハファームのパンヤ・チョティタエ ワン社長は、 タイブロイラー産業のWTO体制下における今後4年間の動向予測を 経済誌に発表した。  それによると、 ウルグアイ・ラウンド合意の実施により、 自由貿易が促進され る結果、 タイの国内外市場を併せて、 現在の2倍の鶏肉需要が見込めるとしてい る。 このうち、 国内需要に限っては、 年率15〜20%の増加を見込んでいるが、 輸 出に関しては、 相手国の提示する品質および衛生基準をクリアすることが必要で あり、 これが最大の障害になるとしている。  ちなみに、 タイ商務省は、 台湾の冷凍鶏肉の衛生基準が非関税障壁であるとし て改善を求めているが、 6月に行われた交渉では改善の合意には至らず、 今後は タイの食鶏処理場の検査に係官を派遣するよう、 台湾に求めるとしている。

● 対日輸出は中国の動向次第


 一方、 対日輸出量は、 96年には減少することが予想されている。 ちなみに、 タ イ産骨なし冷凍鶏肉の平均輸入価格は263円/kg (日本貿易統計、 95年) である が、 中国産は同224円と2割近い価格差があり、 中国の優位は歴然としている。  しかし、 中国では飼料の需給ひっ迫と生産コストの上昇に加え、 国内の鶏肉需 要も増加しており、 同国が今後とも今まで同様のペースで対日輸出を増加させる ことは困難とみられている。 このため、 今年は、 過去2年間にわたった中国との 日本市場をめぐる厳しい競争が、 緩和される可能性もあると期待されている。
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