EUの豚肉の需給動向


◇絵でみる需給動向◇

○堅調に推移するデンマークの豚肉市況


● 7月は前年同月比24%高


 7月のデンマークの豚枝肉卸売価格 (市場参考価格、 以下同じ) は、 前年同月 より24%と大幅に値上がりして、 1キロ当たり12.12クローネ (約232円) となっ た。  同国の豚肉価格は、 今年に入り一貫して値上がり傾向にあり、 1月から7月ま での間に2割近く上昇した。 特に、 5月からは前年同月を1割から2割も上回る 高値が続いており、 ここ数年でみてもかなりの高水準となっている。

● 域内向け輸出が急増


 現在の価格高騰は、 主には輸出需要の増加による。 本年2月から3月にかけて は、 域外の主要輸出市場である日本向けは、 わが国の4月からの豚肉基準輸入価 格の引き下げを見越した駆け込み輸入により、 前年同期の2倍強に増加した。  これに加え、 4月以降は、 EUのほぼ全域で、 牛海綿状脳症 (BSE) 問題を背景 に、 牛肉からの代替需要が豚肉に向かっており、 イギリス、 イタリア、 ドイツな どを中心に、 域内への輸出が急増していると伝えられている。

● 価格に影響大きい輸出需要


 デンマークの豚肉生産量に占める輸出量 (生体および調製品を除く) の割合は、 3割から4割に達しており、 輸出の増減は同国の豚肉市況に多大な影響をもたら すことになる。  このため、 昨年11月に、 わが国が豚肉等の輸入に係る緊急措置 (SG) を発動し た時には、 対日輸出の減少を懸念したデンマークなどが中心となって、 EU委員会 に対し、 一定期間市場隔離した豚肉在庫に対して補助金を支払う、 民間在庫補助 制度 (APS) の実施を求めた。 そして、 これにより実行されたAPSでは、 全対象数 量約4万8千トンのうち、 デンマーク産豚肉が4割以上を占め、 同国の輸出依存 度の高さを示す結果となった。  なお、 本年7月1日からのわが国のSG発動に当たっては、 高騰している市況を 反映し、 現在のところ、 そのような対策を求める動きはみられていない。

● 価格は、 今後も高水準を維持


 現在、 EU域内の豚肉価格は、 デンマークのみらなず、 多数の加盟国で高水準に あり、 EU平均の7月の枝肉卸売価格は、 前年同月を3割も上回る高値を記録して いる。 このため、 デンマークの豚肉輸出は、 今後、 わが国よりも、 豚肉消費の増 加が著しいとされるドイツやイタリアなどEU域内へ向けられるとの見方が強い。  EU域内の豚肉需要の増加は、 BSE問題による牛肉の市場混迷、 そしてその長期 化という状況下、 一時的なものとは考えられず、 今後しばらくは、 デンマークだ けではなく、 域内全体の豚肉価格を支える大きな要素となるものとみられる。 ま た一方で、 デンマークは、 フィリピンなどの輸出市場の新規開拓にも努力してお り、 輸出市場を多様化することで、 より長期的なマーケティング戦略にも乗り出 している。
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