共通農業政策の改革をめぐる動きが活発化 (EU)



● 加盟国拡大や次期ラウンド交渉を射程に


 EUでは、 92年以来の新たな共通農業政策 (CAP) 改革への動きが活発になって きている。  次期改革の焦点としては、 中・東欧諸国のEUへの加盟交渉を98年初頭に控え、 農業予算額の増加に対する抑止制度の導入や、 世界貿易機関 (WTO) 体制下で、 99年から始まる予定の新たな多国間貿易交渉に備えた農業支持政策の転換などが、 挙げられる。  前回、 92年の改革においては、 農産物の過剰問題や農業予算の削減を中心に抜 本的な改革が実施されたが、 これは、 当時のEC農業委員の名を冠し、 マックシャ リー・プランと呼ばれた。 次期改革でも、 大幅な政策変更が予想されており、 現 時点では、 マックシャリー・マーク■とも称されている。 今後、 主に穀物、 酪農 および牛肉部門を対象として、 改革案についての検討が本格化し、 1年後にはそ の概要が取りまとめられる見通しとなっている。

● 大幅な改革が予想される酪農部門


 畜産関係の中では、 酪農部門において、 1984年のクオータ制度導入以来の大き な改革が予想されている。 検討されている改革案は、 域内の乳製品の支持価格を 国際レベルにまで引き下げるとともに、 輸出補助金をさらに削減し、 その一方で、 酪農家の損失補てんのため、 新たに乳牛奨励金といった直接補償制度への転換を 図るといった内容である (なお、 92年の改革時点では、 乳製品の過剰在庫がほぼ 消滅していたことから、 酪農部門については大ナタが振るわれず旧制度の大枠が 維持された)。

● 国際貿易ルールとの整合性が論点に


 しかしながら、 過去の実績により牛の飼養頭数に応じて支払われる直接補償制 度については、 UR交渉の過程において、 EU・米国が (国内支持の) 削減対象外に することにかろうじて合意した経緯があるが、 既にケアンズグループが生産との 関連の問題を指摘しており、 次期交渉が始まるとともに議論が集中することは避 けられないものとみられる。  このため、 今後、 対象頭数に何らかのさらに厳しい制限措置を設けることや、 環境保全との関連付けなど、 デカップリング的要素の色彩を強め、 再び削減の対 象外とするための検討が行われるものとみられ、 その検討結果は、 来年初頭にも 提出されるものとみられている。

● 生乳割当制では二重クオータ制を採用か


 また、 生乳生産割当制度については、 従来のクオータ (生産枠) について、 直 接補償制度とリンクさせつつ、 総量を削減していく一方で、 当該クオータを超過 した分について、 一連の価格支持や輸出補助金制度の対象としない新たなクオー タとして追加するといった二重クオータ制も検討されているとみられる。 安価な 乳製品を生産する中・東欧諸国をCAPに取り込むうえでは、 支持対象外の新たな クオータの導入は、 重要な検討課題と考えられている。
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