EUの牛肉の需給動向


◇絵でみる需給動向◇

○牛肉需給の現状と97年の見通し


96年の過剰分は60万トン


 EUにおける牛肉市場の現状と今後の見通しが、 EU委員会の観測部会で報告され た。  これによると、 96年の牛肉生産量は、 前年より5%減少し779万トン、 ま た97年は、 96年並になると見込まれている。 これに対して消費量は、 牛海綿 状脳症 (BSE) 問題の影響が大きく、 96年は前年比9%減少の670万トン、ま た97年は幾分回復するものの、 前年比2%増の684万トンにとどまると見込 まれている。  この結果、 96年に110万トン、 97年には95万トンの需給ギャップ (供 給過剰) が生じるが、 これに、 輸出入量を加減した正味供給過剰量は、 96年が 60万トン、 また97年が40万トンになるとされている。

低迷続く牛肉市況


 EU平均の価格動向についてみると、 代表的な品目とされる若齢雄牛の枝肉 (グ レード:R3) 価格は、 BSEの影響が大きかった96年下半期には前年同期比で1 2%低下の2. 5ECU/kg、 通年では、 前年比10%低下の2. 6ECU/kgにな ると見込まれている。 97年については、 BSEの影響が続く上半期には、 前年同 期比3%の低下となるものの、 下半期には回復して同3%の上昇となり、 また通 年では今年と同水準になると見込まれている。  また、 乳廃牛の枝肉 (グレード:O3) 価格については、 96年通年では、 前 年比で16%値下がりして2. 1ECU/kg、 また97年は今年と同水準と見込ま れている。

イギリスは需給ともに縮少


 国別にみると、 BSE問題の影響が最も大きいイギリスにおいて、 生産と消費と もに域内最大の減少が見込まれており、 96年の生産量は前年比31%減の69 万トン、 消費量は同21%減の70万トンと見込まれている。 ただし、 生産量の 減少幅の方が大きかったことから、 皮肉にも需給はほぼ均衡している。  生産量の大幅な減少は、 BSE対策として実施されている30カ月齢以上の牛の と畜処分による結果であり、 これまでに90万頭が処分され、 年末までには12 0万頭に上ると予想されている。 97年の生産量および消費量は、 96年の減少 が大きかったことの反動もあって、 それぞれ前年比8.3%増、 同10%増と回 復に向かうものの、 95年の水準には回復しないと予測されている。

消費の減少幅大きいドイツ


 ドイツの牛肉消費量は、 94年頃から減少傾向が続いているが、 BSE問題の影 響に伴う豚肉への消費シフトなどにより、 この傾向が一層加速され、 本年3月末 以降は、 前年比3〜4割減の大幅な減少を記録した。 しかしながら、 その後、 夏 場の豚肉価格の高騰により、 一部で牛肉消費の回復がみられることなどから、 9 6年通年では前年より11%程度の減少にとどまるものとみられている。 ただし、 今後は、 豚肉価格の低下に伴い、 再び牛肉消費の減少が予想され、 97年も通年 では前年比2%程度の減少になるとみられている。

フランスの消費は回復過程


 EU最大の牛肉消費国フランスでは、 消費量が、 96年第2四半期には前年同期 比16%減となったが、 その後第3四半期には12%減、 第4四半期には6%減 と、 徐々に回復に向かう傾向にある。 その結果、 96年通年では、 前年比9%減 と、 EU全体の減少率と同等になると見込まれている。 97年は、 前年比5%程度 の増加が予測されているが、 95年の水準にはとどかない状況である。

急がれる長期的な市況対策


 以上のように、 BSEの影響で落ち込んだ牛肉消費は、 わずかながらも回復傾向 にあるとみられているが、 域内の需給ギャップは依然として大きく、 今後におい ても、 大幅な供給過剰が予測されている。 先般、 96年および97年の介入買い 入れ上限数量が、 それぞれ55万トン、 35万トンに引き上げられたが、 純輸出 量を加味しても、 依然として今年、 来年ともに、 5万トン前後が市場にあふれる ことになる。  現在の牛肉価格の低迷は、 このような需給状況を背景としていることから、 今 後の市況テコ入れのための長期的な対策が、 益々重要な課題となっている。
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