タイの鶏肉の需給動向


◇絵でみる需給動向◇

○価格下落対策に生産調整を実施


生産増と輸出低迷により価格が下落


 バンコク市場のブロイラー価格は、 3月以降、 豚肉価格の高騰に伴う需要のシ フトもあって前年の価格水準を上回って推移してきた。 しかし、 8月をピークに 低下に転じ10月の価格は前年水準を下回る、 キロあたり25バーツ (1バーツ =4. 6円) まで下落した。 ヒナ価格もブロイラーと同様の動きを示しており、 8月の1羽10バーツが10月には約3バーツにまで低下した。 この間、 豚肉価 格は依然として高値を保っていることから、 ブロイラー価格低下の原因は、 生産 過剰 (8月は対前年比8%増) と輸出の不振が国内需給を圧迫したためと見られ ている。 特に対日輸出は、 日本が輸入先を他のブロイラー輸出国にシフトしつつ あることから長期的な低下傾向を示しており、 また、 全体的にも、 今春ごろから、 在庫調整を目的とした抑制ぎみの輸入が行われている。

ヒナ生産羽数を2割削減


 この価格下落に、 生産者は危機感を募らせ、 ヒナ餌付け羽数の20%削減に動 いた。 具体的には、 現地紙によると、 民間のふ化会社で構成する 「ふ化センター (スーン・ガイ・パーン) 」 が10月上旬にメンバー会議を開催し、 ヒナの生産 羽数を今後3週間にわたって通常の80%水準に落とし、 余剰種卵は廃棄または 食卵に廻して処分することを決定した。 同時に生産したヒナ1羽あたり25サタ ン (約1円) を徴収し、 余剰ヒナを買い戻す基金に充当することとした。 同セン ターは、 この措置によって、 11月下旬にはブロイラー価格の回復が期待できる とし、 もし、 メンバー会社がこの決定に従わなかった場合、 ヒナ価格は2〜3バ ーツに、 ブロイラー価格は20バーツ水準にまで低下するだろうと警告した。  ちなみに、 この措置によって、 11月のヒナ価格は7バーツと10月の2倍強 となり、 ブロイラー価格は2バーツ上昇して27バーツとなるなど、 予想どおり の効果が現れた。

業界マスコミが輸出停滞の打開策を提示


 タイ鶏肉の生産コストが他の鶏肉輸出国を上回って上昇し、 輸出競争力が低下 したと指摘されて久しい。 主な原因は、 生産コストの大部分を占める飼料価格の 高騰である。 特に、 95年以降、 GATT合意に基づき、 輸入飼料原料に関税割当て が実施されたため、 それまでは関税と課徴金だけであったところに実質的な輸入 数量制限が加わり、 輸入飼料価格が上昇した。 大豆ミールは国内生産が少なく輸 入依存度が高いためこの影響が特に大きかった。 この他に、 対日輸出を考えた場 合、 中国との輸送コストの差も解決の困難な問題となっている。  タイの現地誌 「畜産」 は、 このような状況下でのタイのブロイラー輸出競争力 向上に向けての提言を掲載している。 同誌によれば、 タイ政府は、 国内の飼料原 料生産者の保護措置は取っているが、 畜産物の輸出業界に対しては特段の対策は 取っていないとし、 ブロイラー業界の国際競争力強化のため、 次のような対策を とるべきだとしている。 1. 短期的な対策  ◎飼料原料の関税割当数量をブロイラー輸出数量に応じて増加させる。  ◎飼料穀物の収穫時期に、 その貯蔵経費に対する無利子貸し付けを行う。 2. 長期的な対策  ◎飼料原料の輸入関税の還付 (輸出向け鶏肉の生産に使用された輸入飼料原料   に対する輸入関税の還付)  ◎輸出市場の多角化。 特定市場 (日本市場を示唆) に固執す危険性を指摘  ◎飼料原料輸入関税の改定。 タイと競合する国の関税率を考慮 (関税ゼロを示   唆)
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