10月の価格は、 8月に比べ9. 6%の上昇
96年に入り、 価格低迷が続いた脱脂粉乳の価格は、 9月に入ってから反発し、 10月にも上昇傾向が続いている。 1月から10月までの脱脂粉乳の生産量は、 生乳生産量の増加により、 約10 0万5千トン (12カ国:暫定値) と、 対前年同期比3.6%増加となった。 そ うした状況下で、 域内の指標価格の一つであるドイツ工場渡し価格は、 8月に3 63マルク/100kg (約27,300円) にまで下落し底を打った後、 9月か らは反発に転じ、 10月には8月に比べ9.6%上昇して398マルク (約29, 900円) となった。 また、 11月は横ばい傾向となっている。子牛向け飼料の需要回復が、 原因
このように、 脱脂粉乳の域内価格が9月以降急反発した原因は、 介入発動期間 である3月から8月 (6カ月の季節介入) にかけて、 アイルランド、 イギリス、 ドイツなどを中心に、 買入が実施されて需給が引き締まったことに加えて、 1)搾 乳のピークを過ぎて、 生産が季節的に減少したことや、 2) 価格の低迷期間中に、 当用買いを続けていた子牛飼料関係の需要家の手持ち在庫が減少し、 9月以降需 要が一時的に回復したことによるものである。価格は、 今後再び下落か
ただし、 11月の脱脂粉乳の価格は、 対前年同期比で3.9%の低下 (前々年 比では、 5.5%の低下) となっており、 厳しい市況低迷からは脱しているもの の、 依然として低い水準にある。 また、 今後の価格がさらに上昇するとみる材料は、 あまり見られない。 需要の 5割以上を占め最大の用途である子牛飼料向けの需要は、 牛海綿状脳症 (BSE)問 題による市況低迷の対策の一環である子牛のと畜推進計画の進行と、 肉牛生産者 の生産意欲の減退の中で、 今後さらに伸びることを期待することが、 難しい状況 にある。 また、 域外向け輸出については、 依然として脱脂粉乳の国際市況が芳しくない ことにより、 回復する兆しが見られない。 11月の脱脂粉乳の国際価格は、 前年 同月に比べ17.6%低下の1,750ドル/トン (約19万9千円) となった。 EU委員会は、 8月14日付けで脱脂粉乳の輸出補助金を15% (55ECU/10 0kg (約8,000円) から63ECU (約9,100円) ) 引き上げたものの、EU の主要輸出先であるメキシコや北アフリカなどへの輸出は、 95年に比べ大幅に 減少している。 さらに、 3月から8月にかけての介入買入によって10月末には約12万7千 トンにまで増加した介入在庫量が、 今後大幅に減少する気配はあまりない。 EU委 員会は、 最も在庫量が多いアイルランドからの放出を決定したが、 現在のところ 放出予定価格が高すぎたため、 売却されていない状況にある。 このようなことから、 関係者の間では、 域内の脱脂粉乳の価格は11月をピー クに、 乾乳期に向かうにもかかわらず、 むしろ下落するのではないかとの見方が 強い。 今秋、 一時的に回復がみられた脱脂粉乳の市況は、 今後また厳しい状態に なることが予想されることから、 EU委員会は、 何らかの市況対策措置を講ずる必 要を迫られることになりそうだ。