米国の牛乳・乳製品の需給動向


◇絵でみる需給動向◇

○酪農家戸数等の動向


酪農家戸数の減少が続く


 米国最大の農業生産者団体であるアメリカン・ファーム・ビューロー・フェデ レーション (AFBF) が実施した調査によると、 96年の米国の酪農家戸数は、 前 年と比べて5. 3%減少し、 10万6, 045戸となった。 この結果、 AFBFが 調査を開始した92年以降、 酪農家戸数は、 4年間で2万5, 490戸、 19. 4%減少したことになる。  一方、 米農務省 (USDA) の調査によると、 96年の総農家戸数 (年間千ドル以 上 (政府からの補助金も含む) の農産物を販売した農家) は、 2,063千戸と 前年の2,072千戸に比べ9千戸、 0.4%減と、 わずかな減少にとどまって いる。

乳価低迷、 コスト増大などの圧迫要因


 AFBFは、 酪農家の減少割合が大きい要因として、 (1) 94年から95年にか けての乳価の低迷、 (2) 飼料費を中心とした生産コストの増大、 (3) 高齢化 による廃業 (農場が後継者に引き継がれるよりも他の用途に転売される頻度が高 い) 、 などを挙げている。 また、 今年の飼料価格の高騰により、 生産者の意欲が 減退していることから、 酪農家戸数は、 来年も減少すると見込んでいる。

すべての地域で酪農家戸数が減少


 酪農家戸数の動向を地域別にみると、 96年にはすべての地域で戸数が減少し ている。 家族経営を中心とし、 酪農家戸数の最も多いウイスコンシン州では、 前 年比5. 1%減の22, 526戸となった。 また、 生乳生産量が最も多く、 大 規模経営が多いカリフォルニア州では、 前年比8. 6%減の2, 178戸とな っている。

小規模経営の減少が加速する見込み


 一方、 酪農家戸数が減少傾向で推移する中で、 乳牛の総飼養頭数も、 86年以 降、 10年間で11. 7%減少し、 96年9月には9, 345千頭となった。 1戸当たりの乳牛の平均飼養頭数は、 92年の73.7頭から96年の88.1 頭となり、 飼養規模の拡大が進んでいる。  また、 経営規模別の酪農家戸数をUSDAの調査で見ると、 95年は、 総戸数の約 8割を占める100頭以下の乳牛を保有する酪農家戸数が、 前年より1万900 戸減少している。 一方、 総生乳生産量の6割を占める100頭以上をもつ酪農家 戸数は、 前年より3,000戸増加した。 USDAは、 今年の飼料価格の高騰などに よる経営環境の悪化から、 特に、 小規模酪農家の減少が、 さらに加速されるもの と見込んでいる。 酪農家戸数等 資料:酪農家戸数は、 AFBFの調査結果乳牛頭数は、    「Livestock、 Dairy and PoultrySituation and Outlook」    総農家戸数は、 「Farm and Land in Farm」 注 :総農家戸数は、 年間千ドル以上の農産物を販売した農家

酪農経営に影響する制度改正


 96年4月に成立した、 96年農業法によって示された乳製品の価格支持水準 の引き下げや飲用乳の最低価格を保証するミルク・マーケティング・オーダー制 度の再編、 また、 輸出補助金の削減に伴う国際競争の激化は、 酪農家戸数のみな らず、 生乳生産の地域分布、 経営形態等、 米国酪農の生産構造にさらなる変化を もたらすものと考えられる。
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