EUの豚肉の需給動向


◇絵でみる需給動向◇

○8月期豚センサス、 わずかながらも減少に


依然、 拡大に慎重な生産者


 欧州統計局発表の96年8月期の豚センサスによると、 EU15カ国の豚総飼養 頭数は、 わずかに前年同期を下回り、 1,235万頭となった。 EUの豚肉価格は 牛海綿状脳症 (BSE)問題による牛肉消費の低迷と、 それに代わる豚肉消費の増加 によって、 今年夏場にかけては、 前年水準を大幅に上回って推移した。 このよう な好価格に刺激されて、 飼養頭数は拡大傾向に向かうとの見方が強かったが、 4 月期センサスに続いて、 わずかながらも前年同期を下回る結果となった。  今回センサスでは、 EU全体としては停滞傾向が示されたが、 国別にみると、 今 後の肉豚生産の増加傾向を示しているところが多い。 このことは、 牛肉からの消 費シフトによる大幅な収益の改善にも直ちには反応しなかった生産者が、 一部の 国を除きようやく経営拡大意欲を示し始めた徴候とみることができる。 96年8月期主要国別豚飼養頭数  資料:欧州統計局   注:速報値

デンマーク、 フランス等では増加の見込み


 域内外への主要豚肉輸出国であるデンマークでは、 総飼養頭数が前年同期比0. 2%とほぼ横ばいとなったのに対して、 20kg以下の子豚頭数は同5.6%の増 加となっており、 近い将来の肉豚供給の拡大傾向を示している。 また、 繁殖用雌 豚の飼養頭数は1.9%増にとどまったものの、 うち初妊雌は4.1%増、 また 未経産雌も3.7%増と、 それぞれ前年同期を上回っており、 同国の肉豚供給が、 今後も一定期間は拡大する見通しであることを示唆している。  また、 EU第3位の豚肉生産国であるフランスでは、 総飼養頭数が前年同期比1. 9%増となったのに対して、 初妊雌豚は7.3%もの増加となっている。 この他、 主要国の中では、 ベルギーの総飼養頭数が3.8%増と、 比較的高い伸び率を示 しており、 繁殖用雌豚も5.6%増と、 総飼養頭数を上回る伸び率を示している。

減少続く、 ドイツ、 オランダ


 一方、 ドイツ、 オランダでは、 総飼養頭数、 繁殖雌豚頭数ともに前年同期を下 回っており、 両国とも近年の減少傾向を踏襲する結果となった。  EU全体の約2割を占める、 最大の豚肉生産国ドイツでは、 環境問題や生産資材 価格の上昇等により、 ここ数年、 肉豚生産の減少傾向が続いていた。 しかしなが ら、 今回センサスでは、 旧東ドイツ地域で減少傾向が続く一方で、 旧西ドイツ地 域では、 わずかながらも前年同期を上回ったことから、 飼養頭数の減少に歯止め がかかり始めたとの見方も強い。 オランダについては、 環境問題に関連した諸規 制を反映したものとされ、 同国での肉豚生産は今後も停滞傾向にあるものとみら れる。

価格は弱含みの展開


 今回のセンサスから、 EU全体の肉豚生産量は、 今後やや増加傾向になると予想 される。 したがって、 今後、 BSE 「特需」 が去れば、 豚肉価格が弱含みの展開と なることも予測される。 事実、 豚肉市況は、 クリスマス前の需要期にもかかわら ず、 秋口から既に、 値下がり傾向となっている。 また、 一方で、 域外輸出への輸 出補助金が凍結されており、 豚肉の価格低下は今後さらに進む可能性すらある。 このため、 今後の価格動向によっては、 今回のセンサスで生産拡大傾向を示した 加盟国でも、 今後、 生産者の増頭意欲が低下することも考えられる。
元のページに戻る