世界食料サミットを開催 (FAO)



飢餓撲滅を目指したローマ宣言を採択


 11月14日から17日にかけて、 イタリア・ローマの国連食料農業機関(FAO) 本部において、 世界の170を超える国・地域からの代表が出席し、 21世紀に 向けた地球規模の食料問題への取組みに合意することを目的として、 史上初の世 界食料サミットが開催された。  同サミットには、 わが国の藤本農相のほか、 グリックマン農務長官 (米国) 、 李鵬首相 (中国) 、 フィシュラー農業委員 (EU) 等、 主要国の首脳や閣僚が出席 した。 会議では、 ガリ国連事務総長等が基調演説を行ったほか、 世界の食料安全 保障の達成と2015年までの栄養不足人口の半減を目指した 「政策声明 (ロー マ宣言) 」 及びその具体的な方策を示す 「行動計画」 が採択された。

わが国は輸入国側の立場を強調


 続いて各国の首席代表演説が行われ、 わが国は、 ローマ宣言が、 食料問題を輸 入国を含めた視点から捉えていることについて高く評価する旨を表明した。 また、 食料安全保障の面からは、 国内生産・輸入・備蓄の適切な組合せと持続可能な国 内生産が重要なこと、 農業の多面的機能を評価すべきこと、 輸出国は輸入国に対 する安定供給の責任を負うべきこと等、 食料輸入国としての立場を強調した。  一方、 米国は、 地球規模の食料安全保障には自由貿易が不可欠であり、 保護主 義や孤立主義が誤ったものであることは歴史が証明しているとの自由貿易推進の 立場を主張した。 また、 豪州、 ニュージーランド等のケアンズグループ各国も、 農産物貿易の一層の自由化を求める演説を行うなど、 輸入国側との立場の違いを 鮮明にした。

中国は食料自給の維持を強調


 また、 世界の食料需給に大きな影響力を持つ立場にある中国は、 「12億の人 口を抱えるわが国にとって、 食料安保は基本政策である」 と述べ、 ローマ宣言の 主旨を全面的に支持する姿勢を明らかにした。 また、 2年連続の豊作を背景に、 「わが国は増大する国内需要を賄う潜在生産能力を有している」 と強調し、 同国 が将来の国際食料需給の不安定要因になるとの見方を強く否定した。  さらに、 EU (及び加盟国) は、 農業や農村の維持は、 生態系や景観の保存に役 立っているとして、 その保護の必要性を訴える一方、 ウルグアイ・ラウンド合意 により貿易自由化が進んだ結果、 農産物の国際価格が上昇して途上国の食料輸入 が困難になったと指摘し、 米国等の自由化推進論に釘を刺す演説を行った。

両論併記の宣言内容に


 以上のように、 同会議は、 21世紀に向けた地球規模での食料問題への取組み への合意を目的としていたにもかかわらず、 蓋を開けると食料輸出国側と輸入国 側の意見の違いが鮮明に現れる結果となった。  しかし、 FAOは基本的に多国間交渉をまとめる場ではないことから、 ローマ宣 言は、 両者の主張を併記する形で取りまとめられた。 今後、 参加各国は、 採択さ れた行動計画に沿った施策を具体化していくこととなる。
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