二大乳業メーカーに合併の動き (豪州)



国際競争力の強化が目的


 豪州の酪農は、 好調な乳製品の国際市況を背景に、 この5年間に生乳生産量を 36%も拡大してきており、 96/97年度の生乳生産量も、 史上最高を記録し た前年度を4%上回る91億リットルに達するものと予想されている。  こうしたなかで、 勢力が拮抗する豪州の二大乳業メーカーであり、 互いに業界 をけん引してきたボンラック社とマレー・ゴールバン社が、 国際市場での競争力 の強化に向けて合併するとの観測が、 現実味のあるものとして浮上してきた。

両社で全国の5割の生乳を処理


 ボンラック社とマレー・ゴールバン社の年間の生乳処理量は、 それぞれ豪州全 体の約25%で、 95/96年度には、 売上高がともに10億ドル前後となった (ボンラック社が10億6千万ドル、 マレー・ゴールバン社が9億6千万ドル) 。 現在は、 更なる拡大に向けて、 両社とも工場新設などの設備投資を活発化させて いる。  なお、 両社は、 ともに酪農協同組合組織で、 豪州全体の生乳生産シェアの6割 を占めるビクトリア州を本拠としている。 組合農家数はそれぞれ3千を超えるが、 これは、 同州内の酪農家のおよそ4分の3がこの両組合のいずれかに属している 計算となる。

国際競争の場では小規模


 両社とも、 豪州内ではトップメーカーであるものの、 国際乳製品市場では、 競 争力が十分にあるとは必ずしも言えない状況にある。 両社の売上高は、 国際市場 で競合するネスレ社やクラフト社などの多国籍食品企業と比べると、 数十分の一 に過ぎない。 また、 隣国ニュージーランドは、 生乳生産量が豪州とほぼ同じ規模 であるが、 デーリー・ボードを通じて主要な乳製品の輸出業務を一元的に取り扱 っており、 高い国際競争力を備えている。  このような中で、 ボンラック社のヒル会長は、 先頃、 ビクトリア州の農業記者 クラブに対し 「 (同社が) 国際競争に勝ち残り、 ビクトリア州酪農家のものとし てあり続けるためには、 売上高ベースで現在の2〜3倍の規模にならなければな らない」 と語り、 その一手段として、 マレー・ゴールバン社との合併について 「しかるべき時期がきたと判断されれば、 おそらくそうなる」 と述べた。  一方、 マレー・ゴールバン社のスチュアート会長も、 国際市場における豪州の 影響力は非常に小さいとして、 合併は組合員が検討しなければならない明瞭なシ ナリオであると語った。

関係者は合併支持が大勢


 両社の合併に対しては、 酪農関係者の一部に、 将来の生乳の取引売買に関して、 乳業メーカー側による市場支配を懸念する声もある。 しかしながら、 大勢は、 今 後の推移を見守る必要はあるとしながらも、 合併を支持しているとみられる。 ま た、 一歩進んで、 酪農団体の幹部の間では、 乳業メーカーの合併は、 国際市場で の競争力を維持していくための国際的なすう勢であり、 「必然」 であるという意 見が出ている。 さらに、 両社の合併は 「5年以内に起こる」 との見方もある。  この合併問題に関しては、 関係者の 「世論」 が先行している感もある。 しかし ながら、 現在、 全体的には停滞感が強い豪州の畜産業界の中で、 唯一気を吐いて いる酪農業界では、 さらに国際競争力を強化するための機が熟しつつあるとみら れる。
元のページに戻る