96年の穀物収穫、 史上最高の見込み (中国)



夏の洪水を克服して史上最高を達成


 国家統計局の推計によると、 96年 (暦年) の糧食の収穫見込み (穀物+大豆・ 一部のイモ類) は480百万トンとなり、 昨年に引き続き、 史上最高を記録 (前 年比約3%増) する見込みとなっている。  糧食の中で最大のシェア (約4割) を占めるのはコメであるが、 その主産地で ある揚子江中・下流域では、 今年夏に大規模な洪水災害が発生した。 中国の食糧 需給問題に内外の注目が集まる中で、 洪水被害が例年にも増して大きかったこと から、 全体的な穀物供給への影響が懸念された。 しかしながら、 結果的には、 史 上最高の豊作となる見通しとなった。 これは、 1) コメについては、 早期育成型 品種の普及により洪水被害が一部回避できたこと、 また、 2) 主に飼料向けのト ウモロコシなどの畑作穀物は、 主産地である東北地方の作柄が、 極めて良好 (現 地農業関係者) となったことによるものである。 <糧食収穫量の推移> ──────────────────────────────────────        96年(前年比) 95年(前年比) 94年(前年比) 93年(前年比) ────────────────────────────────────── トウモロコシ   − 112.0 (+12.8 ) 99.3 (- 3.3 ) 102.7 (+ 7.7 ) 小  麦 − 102.2 (+ 2.9 ) 99.3 (- 6.7 ) 106.4 (+ 4.7 ) コ  メ − 185.2 (+ 5.3 ) 175.9 (- 0.9 ) 177.5 (- 4.8 ) ────────────────────────────────────── 糧食合計 480.0 (+2.9 ) 466.6 (+ 4.8 ) 445.1 (- 2.5 ) 456.5 (+ 3.1 ) ──────────────────────────────────────  (注)1 資料 中国統計年鑑  2 単位 百万トン     3 96年は見込み数字(品目別内訳は未確認)

2年連続の豊作により、 穀物輸入は急減


 一方、 国際的な関心を集めている穀物の輸入についてみると、 96年に入って からの糧食の輸入量 (1〜9月) は、 前年同期に比べて−33%と、 「急減」 し ている。 これは、 昨年も収穫高が史上最高を記録 (前年比4.8%増) しており、 2年連続で増産となったことから、 需給の逼迫が大幅に改善されたことによるも のである。 こうした需給緩和の結果、 トウモロコシの全国平均価格 (農業部調べ) は、 9月が1.51元 (約20円) /kgと、 前年同月比で約12%低下している。 <糧食輸入の推移> ───────────────────────────────────── 96年1〜9月 95年 94年 93年 ───────────────────────────────────── トウモロコシ   440 (-83.0 ) 5,181 ( * ) 0.6 (+100 )   0.3 大 麦  (データ不明) 1,274 ( - 3.3 ) 1,318 (+70.3 ) 774 小 麦  6,340 (- 9.4 ) 11,590 (+ 58.8 ) 7,300 (+13.7 ) 6,420 ───────────────────────────────────── 糧 食  8,270 (-33.4) 20,810 (+126.2 ) 9,200 (+22.3 ) 7,520 ─────────────────────────────────────  (注)1 資料 中国統計年鑑、海関統計  2 単位 千トン     3( )内は前年同期比

トウモロコシの輸入、 前年比で8割強の 「激減」


 次に、 輸入の内訳をみると、 主に飼料用のトウモロコシが前年同期比 (1〜9 月) で80%以上も減少したのに対して、 主に食用となる小麦の方は同約9%の 減少に止まっており、 極めて対照的な動向を示している。 一方、 需要面について みると、 高い経済成長が続いていることから、 飼料穀物、 小麦は、 ともに需要が 伸び続けている。 したがって、 輸入動向の差異が大きく表れた原因は、 主に生産 サイドにあるとみられる。  96年に入ってから本格的に出回りはじめた、 95年産トウモロコシは、 生産 が急増している (前年比13%増) 。 これに対して、 小麦の生産量は、 95年が 前年比約3%増、 また、 96年は、 小麦が中心となる春収穫 (6月末までに収穫 される穀物) が前年比約2%増と、 いずれも小幅の増加に止まっている。 双方の 生産の伸び率に格差が大きいことが、 それぞれの輸入動向の差異に反映している と考えられる。

今のところ不安材料はない97年春収穫穀物


 95、 96年の連続豊作の背景には、 中央政府の農業テコ入れ策 (財貨の優先 的配分、 モデル事業の実施、 関連産業の育成等を通じて) の本格化や、 穀物の公 的買入価格の大幅な引き上げ、 また、 需給の逼迫による市中価格の高騰によって、 農家の生産意欲が向上したことが挙げられる。  中央政府は、 一般産業の急成長に比べて農業部門が遅れており、 それが物価高 や農村部の停滞につながっている点を重視し、 94年には一連の農業テコ入れ政 策を決定した。 また、 その政策に従って、 95年からは、 生産振興のための事業 の実施を本格化させた。 こうしたことから、 糧食生産は、 依然として天候に左右 される面が大きいとはいえ、 政策的な支援体制からみると、 今後の成長が期待で きる状況となっている。  また、 97年の動向を予測するうえでは、 当面、 秋蒔き/春収穫穀物の作付け 状況が重要であるが、 現地報道を見る限り、 秋蒔き穀物の中心を占める華北、 東 北地方の天候状況は、 11月末までのところ概ね順調で、 作付けに当たっての問 題は特にみられない。
元のページに戻る