豚肉業界の動きが活発化 (タイ)



 ここ数年、 豚肉生産は伸び悩んでいたが、 最近の豚肉価格の高騰をきっかけに、 
やや活力を取り戻しつつある。 生産構造面では、 インテグレーション化が進み、 
生産規模が拡大している。 また、 新たな投資やプロジェクトが開始される中、 海
外市場獲得への動きが活発化している。

年間約35万トンの豚肉を生産


 豚肉は、 年間およそ35万トン生産されているが、 これらは主に国内市場を中 心に消費されている。 これは、 国内で発生する口蹄疫などの衛生条件の問題によ り、 輸出相手国が限られており、 年間わずか数百トン程度が、 主に東南アジア諸 国に輸出されているに過ぎないためである。 しかも、 最大の輸出先である香港で は、 近年、 米国産などに押され、 輸出量が減少している。 こうした状況の中で、 豚肉生産は、 94年に35万5千トンを記録して以降伸び悩んでおり、 業界の活 性化が政府の懸案となっていた。

インテグレーション化が進展


 しかしながら、 生産が停滞する一方で、 鶏肉生産部門と同様に、 豚肉生産部門 のインテグレーション化は確実に進行している。 中には、 大手企業が銀行や大学 と協力して、 有望養豚農家に対し資金と技術面の双方で支援を行い、 生産規模を 拡大させつつ、 自らの系列に取り込んでいく動きもある。 このインテグレーショ ン化の進展により、 中小規模の農家戸数が減少している。 特に、 生産規模100 頭以上500頭未満の階層の戸数の減少が顕著に見られ、 経営規模の格差が拡大 している。

豚肉価格高騰が契機に


 一方、 そうした状況下で、 豚肉価格は、 昨年来、 徐々に上昇していたが、 今年 に入ってからは一挙に高騰した。 バンコクの豚肉卸売価格は、 94年平均でキロ 当たり61バーツ (1バーツ=約4. 6円) 、 95年は72バーツであったが、 今年9月には85バーツにまで達した。 このため、 一時はひっ迫した国内需給を 調整するべく、 マレーシアや中国から豚肉の緊急輸入が計画されるほどであった。  しかし、 今回の価格高騰は、 生産面においては、 長い足踏み状態から脱する契 機となった。 豚肉価格の上昇により収益性が改善した養豚業界では、 新たな規模 拡大投資や幾つかのプロジェクトが計画されている。 鶏肉生産も行っているタイ 大手企業グループは、 日系企業との合弁事業として豚肉生産のプロジェクトを開 始した。 この計画は、 SPF豚を生産し、 これを国内の中所得層以上の消費者向け に販売するだけでなく、 近隣諸国に輸出するというもので、 と畜場や加工場の建 設計画も含む大規模なものである。 さらに、 輸出の可能性を探る調査団を派遣す るなど、 新たな市場獲得に向けた動きが活発化している。
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