LL牛乳のフレッシュ表示にクレーム (シンガポール)



 シンガポールの消費者団体 (CASE) は、 この程、 スーパーなどで販売されてい
るロングライフ (LL) 牛乳の一部に“フレッシュ”という表示があるのは事実に
反するうえ、 高値販売にもつながるとして、 国内乳業会社や輸入会社に改善を要
請した。 要請を受けた各社は、 表示の変更を表明しており、 来年1月ごろまでに
は、 次第に是正される見込みである。

「フレッシュ」 表示の疑問を指摘


 シンガポールの牛乳・乳製品の消費水準は、 東南アジアの中では最も高く、 年 間一人当たりの飲用乳消費量は、 30リットル程度に達している。 このような需 要の高さとゼロ関税率を背景に、 世界各地から牛乳・乳製品が輸入されており、 種類も非常に豊富である。 飲用乳は、 遠く豪州やタイから空輸されている。  今回のCASEの指摘は、 「LL牛乳は、 超高温殺菌 (UHT) 処理されているので、 こ れに“フレッシュ”と表示するのは適切でない。 また、 低温殺菌牛乳が“フレッ シュ”表示のもとで高値で販売されるので、 LL牛乳に混同しやすい表示を行うの は、 それを高値で販売する意図ではないのか」 というものである。  要冷蔵の牛乳12種類とLL牛乳8種類について実際に調査したところ、 1リッ トル当たりの価格は、 牛乳が平均2.8ドル (約224円) 、 LL牛乳は同1.8 ドル (約144円) 程度であった。 これらの中で、 CASEの指摘のとおりLL牛乳に “フレッシュ”と表示されたものが3種類あり、 いずれも国内乳業会社が生産、 あるいは国内乳業会社の委託によってパック後、 輸入されたものであった。 豪州 やニュージーランドからの輸入製品には、 このような表示はなかった。

食品販売法に基づく適正表示を要請


 ただし、 CASEの指摘には、 UHTイコールLLという誤解が含まれている。 ちなみ に、 日本では9割以上がUHT処理されているが、 LL牛乳としては流通しておらず、 UHT処理した上での冷蔵流通という方法が取られている。 東南アジアでも、 ほと んどがUHT処理されており、 したがって、 シンガポールの店頭にある牛乳も、 UHT 処理されたものが多いと思われる。  しかしながら、 CASEのような消費者団体の今回の要求活動は、 少なくとも畜産 物に関しては、 東南アジアでは珍しいケースである。 シンガポールの活発な畜産 物消費傾向がこのような団体に活動の場を与えているといえよう。 昨年8月には、 豚肉価格の高騰に対して流通業者に抗議し、 政府には沈静対策を要請した実績も ある。  CASEの会長は、 「大手企業が表示の是正に積極的でないと、 あと (中小企業) が続かない」 と業界全体の対応を要請しており、 今後は、 食品販売法に基づき、 「UHT」 あるいは 「殺菌」 という表示を大きく明瞭に行うよう働きかけるとしてい る。
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