NAFTA発効後の食肉貿易への影響 (米国)



農産物貿易額は、 期待どおり拡大基調に


 米農務省・経済調査局 (ERS) は、 94年1月のNAFTA発効後の農産物貿易につ いて、 メキシコの通貨危機とその後の経済停滞の影響による貿易の伸び悩みや、 カナダと米国の乳製品や家きん肉の国境措置に関する紛争などの問題はあるもの の、 期待通りの拡大傾向にあると評価している。 ERSは、 加盟国間の農産物貿易 額について、 95年の約190億ドル (約2兆2千万円) から、 2005年には 約300億ドル (約3兆4千万円) にまで拡大するものと見込んでいる。

米・加間の食肉の生産・流通形態に変化の兆し


 また、 ERSは、 農産物貿易の拡大にともなって、 加盟国の農産物部門では、 特 に食肉の生産・流通構造に変化が表れていると指摘している。 (肉牛・牛肉分野)  米・加間の肉牛・牛肉取引についてみると、 これまでは、 主要生産地帯のと畜 加工処理能力の違いを反映して、 米国はカナダから肥育を終了したと畜用の生体 牛を輸入する一方、 カナダは米国産の牛肉を輸入するというパターンが主体とな っていた。  ところが、 NAFTA発効後は、 カナダで米国企業によるパッカーの買収や加工処 理施設の建設が行われたことから、 と畜用の肉牛の対米輸出が減少したのに対し て、 部分肉の形で米国西海岸に牛肉が輸出される傾向が強まっている。 なお、 米 国からカナダへの牛肉輸出については、 カナダ政府による飼料輸送費補助制度の 廃止に伴って、 飼料生産地から離れたカナダ東部の肉牛産業の競争力が低下する ため、 この地域への米国産牛肉の供給の拡大が見込まれている。 (豚肉分野)  次に、 米・加間の豚肉取引についてみると、 カナダ西部の豚肉が米国西海岸の 大消費地へ輸出される一方、 米国中西部産の豚肉がカナダ東部の大都市圏へ輸出 されることが多くなっている。  また、 メキシコ北西部のソノラ州が、 近い将来、 衛生・検疫問題を解決して対 米輸出を可能とし、 地理的に近い米国西海岸をターゲットとして輸出を開始する と予想されている。

今後とも自由貿易の推進が期待される


 NAFTA加盟国間の農産物貿易においては、 低率関税枠の拡大や、 関税率の低減 が進んでいることから、 国境の障壁が低くなりつつある。 その結果、 農産物の取 引は、 今後、 益々国家間の貿易としての色合いが薄まり、 それぞれの生産や流通 に関する立地条件や経済的要因をストレートに反映したものになっていくと思わ れる。
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