タイの鶏肉の需給動向


◇絵でみる需給動向◇

○最近の飼料及び鶏肉生産動向



飼料原料価格が高騰

 タイでは、 昨年2月よりガット新協定に基づいた農産物の市場開放が始まり、 飼料原料の輸入も、 関税特別課徴金制度による輸入から関税割当制度による輸入 へと移行した。 昨年は、 この新制度による輸入初年度ということもあって、 政府 が設定した関税割当数量が国内需要を大幅に下回る事態が発生し、 新たに追加割 当の発給を行わざるを得なくなった。 その結果、 飼料原料の国内市場が混乱し、 価格の高騰を招いた。 また、 昨年雨期にタイを襲った洪水は、 飼料原料の生産に 大きな被害を及ぼし、 この混乱を助長する形となった。

飼料の生産コスト削減は困難

 このような飼料原料価格の高騰は、 需要者である養鶏業界にとって大きな問題 となっている。 ここ数年、 タイの鶏肉輸出数量は、 生産コストの上昇に伴う価格 競争力の低下により減少しつつある。 このため、 各養鶏業者は、 価格競争力の回 復に向けて生産コストの削減努力を行っているが、 昨年来の飼料価格の高騰によ り、 すでに努力も及ばなくなりつつある。 このため、 政府が今年1月に決定した 今年度の飼料原料の関税割当に対して、 早くも飼料・養鶏業界の関係者から、 割 当数量の拡大と関税率の削減を求める声が出ているが、 国内農業を保護する観点 から、 大幅な見直しは当面行われない模様である。

生産・輸出拠点の見直しが進む養鶏業界

 このような中、 タイの大手養鶏業者は、 鶏肉輸出の価格競争力を回復するため、 飼料原料の輸入関税の低い近隣諸国へ生産拠点を移しつつある。 タイ最大の養鶏 業者であるCPグループは、 ベトナム、 インドネシアに続いて、 最近、 ミャンマー への進出を決定した。 ミャンマーでは、 飼料生産及び養鶏事業を開始する計画で ある。 すでにベトナム、 インドネシアでは飼料工場及び養鶏事業がスタートして おり、 近い将来これら諸国から日本市場向けに鶏肉を輸出することも可能となる。 また、 この他の大手養鶏業者も、 ベトナムなどへの進出を具体的に決定している。

タイを脅かす東南アジア各国

 CPグループの資料によると、 東南アジア各国では、 畜産物需要の高まりなどか ら飼料原料の輸入数量は年々拡大しつつある。 その多くの国々の輸入関税は0% に据え置かれている。 このような中で、 インドネシア及びマレーシアは、 特に食 肉輸出においてタイの主要競争相手国として大きく成長しており、 現在の成長が そのまま継続すれば、 近い将来、 タイを超える輸出国となる可能性もある。 また、 中でもインドネシアは、 タイより低いコストで鶏肉生産が行えるため、 輸出条件 が整えば、 中国と並んで日本市場をめぐるライバルとなる可能性があると予想し ている。
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