95年農業所得、 過去20年の最高を記録 (EU)



デンマークなど3カ国で10%を超える伸び

 欧州統計局 (EUROSTAT) の最近の発表によると、 インフレ調整後の95年の実質 的なEU平均農業所得は、 前年よりも2. 6%増加し、 ここ20年来で最高水準を記録 した。 国別にみると、 ベルギーなど数カ国では前年より減少したものの、 デンマ ーク、 スウェーデン、 イギリスにおいて前年比10%以上の高い伸びを示し、 加盟 国全体としては増加傾向にあることを印象づけるものとなった。 なお、 今回の発 表は暫定値によるもので、 正式な数値はこの3月に公表される。

補助金増加が大きな要因

 今回の調査結果では、 共通農業政策 (CAP) の下で直接支給される各種補助金 が、 農業所得の少なからぬ部分を占めていることが鮮明となった。 EUでは、 92年 のCAP改革によって穀物や肉牛生産の市場支持価格が引き下げられた見返りとし て、 耕地面積や飼養頭数に応じた各種の補助金が農家に直接給付されている。 欧 州統計局では、 95年の実質的な補助金支出額が前年より10. 2%増加したことを 挙げ、 これが所得増加の大きな要因になったとしている。  特にこの傾向は、 オーストラリア、 フィンランド、 スウェーデンの新規加盟3 カ国において顕著にみられた。 スウェーデンを例にみると、 94年には農業所得が 前年より21%減少したのに対し、 EU加盟により補助金受給額が大幅に増加した95 年には前年比26%の増加となった。

強まる予算削減の声

 また、 欧州統計局は、 CAP改革に盛り込まれた穀物の生産調整措置などの供給 引き締め策により、 市場価格が上昇したことも、 所得増加の一因として指摘し ている。 EU委員会のフィシュラー農業委員は、 今回の調査結果について、 生産 者に経営の安定と明るい将来設計を保証するものであると同時に、 CAP改革の成 果を証明するものであると述べ、 CAP継続の必要性を訴えた。  一方、 今回の調査結果は、 近々はじまる96年度の農産物価格パッケージ案の 作成にあたり、 補助金の削減、 市場支持価格のさらなる引き下げなどを求める 意見に格好の材料を与えることになると思われる。 また、 中・東欧諸国のEU加 盟問題では、 農業分野での補助金支出の肥大化が克服すべき大きな課題とされ ており、 今回の発表を機にまた一段と議論が白熱するとみられる。
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