コンピュータによる家畜取引一部民営化へ (豪州)



大規模農家や遠隔地の農家で利用される

 豪州の家畜取引方法の一つに、 CALM (Computer Aided Livestock Marketing) と呼ばれるコンピュータを利用したシステムがある。  CALMは、 生産者が家畜を市場に移動させることなく取引に参加できることから、 輸送コストを削減できるほか、 輸送中の事故を回避できるメリットがあり、 特に 大規模農家や家畜市場から遠隔地に位置する農家を中心に利用されてきた。

AMLCの赤字運営が続く

 CALMは、 87年から現在まで、 豪州食肉畜産公社 (AMLC) の傘下で運営されてき たが、 取引家畜の品質に信頼性が欠ける点や一定規模の頭数が揃わない小規模農 家は参加しにくいなどの問題から、 ここ数年の取引頭数は伸び悩み、 94/95年度 の牛取引頭数は23万4千頭、 羊は180万頭と、 全体の取引頭数からみると4%〜8 %程度のシェアを占めるにすぎない状況となっている。  また、 経営面では、 コンピュータの維持管理に多額の費用を要することから手 数料収入だけではコストを賄いきれず、 毎年多額の赤字を発生し、 AMLCが赤字を 補てんしているのが現状であった。

民間の家畜取引業者に株式の一部を売却

 このような中、 一昨年には、 行政監査機関である産業委員会が、 CALM事業の活 性化を図るべく民営化を進めるよう勧告を行った。   この勧告を受けて、 AMLCは、 CALM事業の一部民営化に向けて調整を続けてきた が、 先般、 CALMの株式の一部を豪州最大手の民間家畜取引業者であるエルダー社 とダルゲッティー社に売却することを決定した。 これによると、 両社は、 今後3 年間に約3百万豪ドルの資金を拠出してCALM事業の75%を買い取るが、 管理部門 を含む残り25%については、 公益性を守る観点から引き続きAMLCが管轄すること となり、 いわゆる共同経営の方式をとることになった。  共同経営に当たっては、 従来どおり、 農家に制限なく参入機会が与えられるこ とや取引情報を公開すること、 さらに、 CALM事業を両社の収益事業から切り離す ことが確認されている。

民営化に対する期待と不安

 今回の大手の家畜取引業者との共同経営によるCALM事業の一部民営化は、 経営 の効率化とともに取引頭数の拡大を通じた事業の活性化を狙いとしている。  しかし、 生産者の間では、 公明かつ適正な運営が求められる家畜取引に民間企 業が直接参入することに対し、 「本当に生産者の利益を守れるのか」 といった懸 念の声も挙がっている。
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