重要目標のインフレ抑制と農業のテコ入れに成果 (中国)



インフレ率は計画範囲内の14.8%に

 国家統計局発表の速報値によれば、 95年のインフレ率 (サービスを除く小売物 価上昇率で計測) は14.8%となり、 94年のインフレ率 (21.7%) に比べて、 7ポ イント近く低下した。 この結果、 昨年3月の全国人民代表大会 (全人代;国会に 相当) で、 国家経済計画の重要目標の一つに掲げられた、 インフレ率を15%以下 に押さえ込むという目標は達成されたことになる。  中国では、 92年から急展開した改革開放政策の進展に伴い、 このところインフ レ率の急上昇が続いてきた。 そうした中、 経済加熱がもたらす歪みや、 沿海部を 中心とした先進的地域と経済発展が遅い内陸農村部との格差の拡大といった諸問 題が顕在化してきた。 こうした状況に対処すべく、 95年には中央政府が、 各省・ 市に物価抑制を強く指導すると共に、 マクロ経済政策面では、 一転して、 引き締 め基調への転換が図られたところである。

物価沈静化傾向の下で高成長の維持

 次に、 経済の最重要指標である国内総生産 (GDP) についてみると、 全人代目 標の前年比8ないし9%増に対して、 95年の実績は10.5%増の5兆7千7百億元 (約75兆円) と、 結果的には、 引き続き極めて好調な成長が維持された (なお、 94年のGDP伸び率は11. 8%であった)。  GDPの成長とインフレ率の動向との関係を総合的にみると、 「物価沈静化傾向 (14. 8%は依然として高いが) の下での高成長の維持」 が達成されたことになる。 このことは、 国家のマクロ経済運営が、 成功裏に進んだことを示唆するものであ る。 なお、 96年の経済運営方針に関する昨年末の中央経済工作会議では、 96年に おいても、 引き続き、 引き締め基調を堅持することが確認されている。

農業の部門のテコ入れにおいても成果

 また、 農業部門では、 農業生産額が前年比4.5%増の1兆1千億元 (約14兆円) となり、 GDPの伸び率に比べて低率ではあるものの、 一部で天候災害があったに も係わらず、 着実な伸びを示した。  価格についてみると、 全体としての小売物価上昇率が15%弱まで下がったのに 対して、 食料品価格は平均を上回る上昇率を示した。 このことは、 食料品価格の ベースとなる農産物価格も、 依然として高い上昇率となったことを示唆するもの である。 国家統計局の報告によれば、 農産物の中心を占める穀物価格は、 95年11 月には前年比36%強上昇している。  こうした価格動向に生産が順調だったことが重なって、 農業生産額の着実な伸 びにつながったものと考えられる。 94年の減産や価格急上昇により、 注目された 食糧生産 (穀物が大部分を占める) は、 前年比+4. 8%の増産となった。 また、 依然として全体でのシェアは低いものの、 畜産の大部分を占める食肉生産は、 95 年1〜9月の実績 (豚、 牛、 羊、 家きん肉) では、 前年比+18.9%の極めて高い 伸びを示している。  こうした生産、 価格動向の下で、 農村部の一人当たり年平均純収入は、 94年に 比べて約5% (インフレ調整後) 増加し、 1,550元 (約20.00円) となった。 これ ら農業部門における一連の実績は、 昨年3月に、 全人代がマクロ経済政策の重点 事項とした農業重視政策もまた、 徐々に成果を上げつつあることを示している。
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