加工原料乳取引価格の引上げで混乱 (タイ)



 政府による加工原料乳取引価格の引上げが実施されたタイでは、 乳業メーカー

各社が一斉に反発し、 新価格での加工原料乳の受入れを拒否するなど、 混乱した

事態を招いている。 



2年ぶりに取引価格を引上げ

 タイでは、 ここ数年、 経済成長に伴う食生活の変化により、 乳製品消費が年率 2ケタ近い勢いで伸びている。 政府は、 増え続ける需要に応えるべく国内の酪農 振興策を進めており、 加工原料乳については一定の取引価格を設定して価格の安 定を図っているが、 今年1月、 当該取引価格を従来の7.50バーツ/キロ (約31円 /キロ) から8.75バーツ/キロ (同36円/キロ) へと、 2年ぶりに約16%引き上 げた。

乳業メーカーが一斉に反発

 最近の飼料価格の高騰と、 昨年タイを襲った洪水の影響により、 酪農生産のコ ストは大きく上昇しているため、 酪農家は今回の値上げを歓迎しているが、 乳業 メーカー各社は、 一斉に反対の立場を表明した。 タイでは、 乳製品の大部分が政 府の価格統制品目に指定されているため、 乳業メーカーには価格裁量権がなく、 加工原料乳価格の引上げに伴うコストの上昇分をそのまま製品価格に転化するこ とはできない。 その上、 タイ政府は、 昨年来のインフレを抑制するべく食料品を 中心に価格を凍結するよう指導しており、 製品価格の引上げは極めて困難な状況 にある。 また、 国内における原料乳製品の不足分を輸入により賄っているが、 そ の中心となるバターオイルや脱脂粉乳などの国際価格が、 世界的な需給ひっ迫を 受けて大幅に上昇しており、 乳製品の製造コストを押し上げている。

受入れ拒否等の実力行使で混乱

 こうした中、 乳業メーカー各社は政府に対する反発を強め、 加工原料乳価格の 引上げの見直しを求める一方、 新価格での加工原料乳の受入れを拒否するなどの 実力行使に出た。 このため、 一部地域では処理しきれない加工原料乳が大量に発 生するなどの損害が出ており、 事態を重くみた政府は、 酪農振興に大きな影響を 及ぼしかねないとして、 近日中にも問題解決に向けて乳業メーカーと話し合う予 定である。
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