EUの牛肉の需給動向


◇絵でみる需給動向◇

○生産動向 −過剰感強く、 輸出補助金をめぐり混乱生じる−



95年、 96年ともに前年をわずかに上回る生産量

 欧州統計局によると、 95年のEU15カ国の牛総と畜頭数は、 前年より約0.5%増 加し、 2,970万頭になると見込まれる。 牛のタイプ別にみると、 子牛のと畜が減 少するが、 その分、 成牛のと畜が増加するとみられている。 また、 牛肉生産量は、 1頭当たり枝肉重量の増加により、 2.5%程度増加すると予測されている。 96年 は、 と畜頭数は95年を下回るが、 1頭当たり枝肉重量の増加が続くことから、 牛 肉生産量は微増になるとみられている。

主要生産国は横ばいまたは微増

 主要国の牛肉生産動向をみると、 増加傾向にあるのは、 イギリス、 スペイン、 アイルランドなどである。 イギリスでは、 経産牛のと畜が進み、 95年の生産を押 し上げる結果となったが、 これは一時的なものとみられ、 今後の生産量は減少に 向かうとみられている。 スペインは、 過去2年間で生産基盤の再編が進んだこと により増加傾向にあるが、 現在の生産水準は限界に近いとみられている。 アイル ランドの生産増加は、 肥育牛のと畜増加によるものであり、 現在の飼養頭数水準 からみて、 当面生産の拡大傾向が続くとみられる。  このほか、 EUの2大牛肉生産国のうち、 フランスでは子牛肉から成牛肉へのシ フトがみられることから、 生産量ベースでは微増傾向となり、 また、 ドイツは横 ばい傾向と予測されている。 一方、 短期的に減少傾向にあると予測されているの は、 デンマーク、 オランダ、 ギリシャ、 オーストリアなどである。 と畜頭数の推移 ─────────────────────────────────── 94年 95年(p) 対前年比 96年(p) 対前年比 (千頭) (千頭) (%) (千頭) (%) EU15カ国 29,536 29,695 100.5 29,494 99.3 フランス 7,250 7,214 99.5 7,167 99.3 ドイツ 5,180 5,135 99.1 5,155 100.4 アイルランド 1,827 1,921 105.1 1,933 100.6 ─────────────────────────────────── 資料:欧州委員会 注 :(p)は予測値

生産増、 消費減の下でのUR合意実行

 このように、 EU全体では生産量が微増傾向となる中、 EU当局は介入買い入れの 抑制的な運用や、 ガット・ウルグアイラウンド (UR) 合意の実行という課題を抱 えており、 難しい市場運営を強いられている。 特に、 95年7月から始まったUR合 意に基づく市場アクセスの拡大や輸出補助金の削減は、 域内消費が減少傾向にあ るなかで、 域内牛肉相場への影響が大きい。  輸出補助金は、 95年9月以降、 11月17日までに、 すでに4回にわたって段階的 に引き下げられた。 その削減率は、 合計で生体が45%、 枝肉については40%に達 している。 これに対し、 輸出依存度の高いアイルランドを中心に、 フランスやド イツといった主要生産国からの反発が強まっている。

輸出補助金の現状に生産者も反発

 また、 現行制度の下では、 補助金付き輸出ライセンスの有効期限が長く、 かつ 譲渡も可能なことから、 同ライセンスが輸出業者により投機的に取引される可能 性も満たしている。 このため、 輸出業者が先細りする補助金を支配する現状への 生産者の不満は強く、 EU委員会は12月1日、 生体、 枝肉あわせて13%程度の補助 金の引き上げと、 その有効期間の短縮を決定した。  UR合意実行元年における、 この輸出補助金をめぐるあつれきは、 今後のEU牛肉 需給の政策運営の難しさを象徴するものといえよう。
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