世界の飼料穀物の需給動向


◇絵でみる需給動向◇

○穀物需給ひっ迫は長期化か



 飼料向けを含む穀物の需給が世界的な規模でひっ迫している。 米国を始めとす

る北半球主要生産国の秋の収穫が終了したが、 年度末在庫の記録的な低下が見込

まれるなど、 依然として憂慮すべき事態が続いている。 こうした中、 穀物需給分

析の専門家が相次いで長期的な見通しを明らかにしたが、 いずれも現在のひっ迫

状況が長期化する懸念を示す内容となっている。 



短期の適正在庫回復は困難

 国際穀物理事会 (IGC、 旧国際小麦理事会) のデニス理事は、 昨年12月の同理 事会の総会において、 世界の穀物在庫が適正水準に回復するには、 単年度の収穫 増加程度ではとても無理だろうと述べ、 穀物在庫が需給の緩衝剤として機能し得 る水準まで回復するには、 少なくとも数年はかかるとの見通しを明らかにした。 また、 世界の穀物貿易数量が当面、 安定的に推移すると見通されていることにつ いては、 アジアの急激な需要増加がロシア等の大幅な需要減少によって相殺され た結果であり、 大変危険な要因をはらんでいる、 と警告している。

穀物需給は緩和からひっ迫基調へと転換

 また、 米国農務省のモース次官は、 1月4日、 イギリスのオックスフォード農 業会議で講演し、 世界の農業関係者は穀物の国際需給が過去20年間にわたる緩和 基調からひっ迫基調へと基本的に転換したことを認識しなければならない、 と述 べた。 同顧問は、 現在の世界的な在庫不足と価格の高騰は、 穀物需給が新たな時 代に入ったことを示すものであり、 穀物価格の高騰が長期化するため、 途上国は 財政的理由から商業ベースの輸入が困難となるので、 食料援助の需要が今後倍増 することが見込まれると指摘している。

穀物の国際需給に構造的な変化

 一方、 国内の穀物トレーダーの間では、 ここ数年、 世界の穀物需給に構造的な 変化が起きていることを指摘する意見が多い。 つまり、 過去の需給ひっ迫は、 い ずれも供給国側の一時的な生産減少が原因であったが、 最近の状況は、 中国を筆 頭とするアジア地域で飼料向けを中心とする穀物需要が急増し、 供給が追いつか なくなったことが背景となっている。 従って、 アジアの穀物需要が衰えを見せな いことを考慮すれば、 供給量が毎年拡大し続けない限り需給は必ずひっ迫する、 というものである。 いずれにせよ、 国際穀物需給は、 当分目が離せない状況が続 きそうだ。
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