拡大に向け、 緩やかなCAP改革路線を採択 (EU)



新規加盟要求国との交渉手順に合意

 EU首脳会議が、 昨年の12月15日、 16日の2日間にわたりスペインのマドリード で開催された。 今回の会議の中心的な議題は、 2002年までのEU域内における通貨 統合とともに、 新規加盟問題をめぐる、 今後のEUの拡大方針に関する協議であっ た。 その新規加盟をめぐってEU首脳と協議を行ったのは、 中・東欧6カ国 (チェ コ、 ポーランド、 スロバキア、 ハンガリー、 ブルガリア、 ルーマニア)、 バルト 3国 (リトアニア、 ラトビア、 エストニア)、 マルタおよびキプロスの首脳であ る。 その結果、 欧州委員会が、 97年後半をめどに新規加盟要求諸国の政治・経済 改革の進展状況に関する報告書を作成し、 これに基づき加盟の適合性を判断し、 各国との交渉準備を行うという基本的合意に達した。

CAPの財政問題が早期加盟実現のネックに

 今回の新規加盟に関する協議において問題となったのは、 共通農業政策 (CAP) に係る財政問題であり、 その議論の基礎となったものは、 95年10月末に発表され た 「拡大戦略白書」 である。 同白書では、 主に、 中・東欧諸国の加盟が今後のEU の全体的な政策にどのような影響を及ぼすかが分析され、 農業部門については、 中・東欧諸国が加盟した場合の農業予算の膨脹が指摘されている。 こうしたこと から、 特に、 EUのフィシュラー農業委員は、 今後CAP改革が進展しない限り、 中・ 東欧諸国加盟後の財政負担は困難であると主張し、 EU側に早期加盟に向けての準 備体制の確立を求める中・東欧諸国の動きを牽制していた。 また、 EUの農業関心 国は、 中・東欧諸国が新規に加盟した場合における、 これらの国の安価な農産物 の流入に対する懸念を表明していた。

対立点の多いCAP改革問題は、 今後とも継続協議

 一方、 今回の首脳会議では、 CAP改革については、 中・東欧諸国の新規加盟ま でに93年度から着手したCAP改革を引き続き行うという、"緩やかなCAP改革"路線 を踏襲することで決着した。 具体的には、 フィシュラー農業委員の主張に基づき、 農家に対する直接補償を増やす代わりに、 農産物に対する支持価格を更に引き下 げることなどが盛り込まれている。 しかしながら、 より抜本的なCAP改革を求め ているイギリス、 スウェーデンの不満や、 中・東欧諸国の新規加盟により自国の 農業補助金が削減されることを恐れる南欧諸国の警戒心などもあり、 CAP改革問 題は、 96年上期の議長国であるイタリアに引き継がれることになろう。
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