今後のCAPは環境問題がカギ(EU)



 

フィシュラー委員、 「多機能型」 農業を力説

 欧州委員会のフィシュラー農業委員は、 共通農業政策 (CAP) 上、 農業の効率化、 近代化に向けて環境問題が優先課題であるとの方針を表明した。 同委員は、 最近 行ったデンマーク議会での演説のなかで 「農業は、 食物を生産するということだ けを最終目標とするのではなく、 観光業に関わったり、 地域文化の振興や自然を 保護することにより、 社会全体に貢献する多機能型の経営を実現する必要がある」 と述べた。

求められる消費者ニーズの追及

 今回の演説で、 同委員は、 まず消費者ニーズという観点から環境問題を取り上 げた。 健康問題や安全性、 また生産過程など、 食物の 「素性」 に対する消費者の 関心が高まっており、 優れた品質ものには相当の金額を支払うという考えが、 一 般的になりつつあると指摘した。 また、 生産者も生態系の保護や生産倫理という 問題に取り組み、 消費者との関係を密接にする必要があるとしている。

脱補助金で、 農業に新たな可能性

 また、 現在、 生産者への補助金支出が多額に及ぶことを挙げ、 消費者の不公平 感是正のためにも、 生産者の補助金依存体質を改めることが必要であることを示 唆した。 自由競争の原理を取り入れて、 市場動向に敏感に反応することにより、 社会全体にサービスする姿勢をとり、 農業者としての職業意識を高めることが必 要としている。 さらに、 同委員は、 需給政策と生産者への補助政策を明確に分離 することが、 消費者と生産者双方にとって有益であり、 農業全体に新たな可能性 を与えると付け加えた。

一対となる補助金予算の削減と環境問題

 今回のフィシュラー農業委員の発言とは別に、 最近、 イギリス農水省とオラン ダ農業省が共同で作成した環境政策に関する報告書では、 補助金政策については、 今後、 環境面での十分な配慮が必要としている。 報告書では、 景観の保護や過密 放牧による汚染リスクの管理などの環境問題と補助政策との関連を示すなどして、 今後のCAP改革の重要項目の一つとして位置づけている。  次期CAP改革をめぐっては、 中・東欧諸国の加盟問題や、 ガット・ウルグアイラ ウンド合意体制下での各種農産物の需給政策などの課題が山積している。 これに、 加盟各国の利害も絡み、 現在さまざまな議論が繰り広げられているが、 膨大な補 助金予算の削減方針と併せて、 環境問題にも今後ますます注目が集まりそうだ。
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