生産急増により豚肉の価格低迷が長期化 (中国)



昨年夏には20%以上の価格低落

 経済成長に伴う需要増による高価格に刺激されて、 94年の豚肉生産量は、 前年 比で+12. 3%と急増した。 このため、 昨年1月までは好調な消費に支えられて、 概ね堅調に推移した豚肉価格は、 最需要期である春節 (中国正月) 明けの2月後 半からは、 低落傾向を強めた。 7−8月には前年の最高時に比べて、 20%以上も 下落する展開となった。 このため、 政府は、 生産者救済の見地から国家買付けを 増やすなどして、 価格テコ入れ策 (中国では、 豚肉の生産・販売は、 85年から自 由化されているにもかかわらず) を講ずるほどであった。

長続きしなかったテコ入れ策の効果

 その結果価格は、 秋 (11月) には一時的に回復を示した。 しかしながら、 その 回復傾向は長続きすることはなかった。 昨年12月中旬の価格は、 年末・年始の需 要期にもかかわらず、 前年同時期に比べて−15%前後と、 再び低迷している。 <豚肉の卸売価格の推移> 単位: 元 (約12.5円)/トン ───────────────────────────────────────   94年/12/22,24 95年/7/14  8/3,4 11/16,17 12/14,15 上海食肉市場(消費地) 10,675 8,000 8,700 9,500 9,120 成都食肉市場(産 地) 10,200 - 8,700 9,100 8,700 ─────────────────────────────────────── (注)1 資料 中国国内貿易部 2 冷凍の枝肉価格

94年を上回る増産が低迷長期化の原因

 行政当局の価格対策にもかかわらず、 昨年末にかけて、 豚肉価格が再び低迷し ている背景としては、 次の点が考えられる。 (1) 生産近代化対策として、 中央政府等の肝いり等で主要地域に集約的な豚肉生 産基地を建設する動きもあって、 95年1−3四半期の生産量が、 94年の伸び率 を大きく上回る、 16%の増産となったこと。 (2) 豚肉は7割の隔絶的なシェアを占めるため、 他の食肉と比べると、 需給とも に成熟しているとみられるが、 一方では、 需要抑制ぎみの中央の経済政策があ るため、 消費面ではその影響を一番受けやすいと考えられること。

大規模養豚・豚肉企業への生産シフト

 飼料穀物価格の高騰が続く中での豚肉価格の低迷は、 肉豚生産者サイドに最も 深刻な影響を与えているものと考えられる。 中国では、 庭先養豚的経営から、 養 豚−豚肉までの一貫的大規模経営まで、 実に多様な生産様式が存在している。 そ うした状況下で、 商業的肉豚生産においては、 「コスト高の製品安」 という経済 環境下では、 穀物調達にまで力を有する一貫的大規模経営がより有利であると考 えられる。 また、 外資の参入面では、 世界最大の食肉会社であるIBP社 (米国) が、 96年度中に山東省に豚肉合弁工場の建設を計画し、 将来的にはさらに投資を 拡大する意向があるとの報道もなされている。  かくのごとく、 中国の豚肉産業は他の畜産部門と同様、 産業構造変化の途上に ある。 今後、 大規模経営の生産比重のシフトを流れたとして、 養豚・豚肉経営主 体の構造変化が、 一層進行してゆくものと考えられる。
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