予想外の好収穫となった95年の穀物生産 (中国)



天候災害を乗り越え、 4億6千万トンを上回る

 水害や干ばつが深刻化したため注目された、 95年の中国の糧食 (飼料穀物や一 部のマメ、 イモ類を含む) 生産量は、 中国の統計当局の発表によれば、 4億6千 万トンを上回る見通しとなった。 これは、 史上最高を記録した一昨年の4億5千 6百万トンを上回る 「大豊作」 である。  生産規模の大きさと12億の人口の故に、 世界的な需給ひっ迫の中で、 中国の生 産動向には大きな注目が注がれている。 ことに、 94年には、 畜産部門を中心に穀 物需要が急増した反面、 天候災害や農地の減少等により減収 (前年比−2.5%) となったことから、 中国は年末にはトウモロコシの輸入に踏み切った。 95年に入 ってからも、 需要増や天候問題等の需給ひっ迫要因が続いたことから、 その収穫 見通しについて、 世界の注目が集まっていたものである。

当面は継続される中国の穀物輸入

 しかしながら、 一昨年を上回る収穫量とはいえ、 経済発展に伴い食用、 飼料用 ともに需要が急増していることから、 需要の伸びに応じた増産となっているわけ ではない。 このため、 今年の豊作が、 今のところ、 国際需給ひっ迫を緩和する力 にはなっていない。 また、 穀類の品目別需要変化や作付面積のシェア変化といっ た、 品目別需給の不均衡の問題 (特に、 大豆からトウモロコシへの作付けシフト による不均衡が指摘されている) もある。  このため、 現在、 国際市況の上昇圧力の一つとなっている中国のトウモロコシ、 小麦の輸入は、 当面、 継続される見通しとなっている。 <中国の穀物輸入量>    単位:万トン ──────────────────────────────────   品  目 93年 94年  95年1−11月 ──────────────────────────────────   トウモロコシ      0.3     0.6  408  小    麦    642     718  969  大    麦     77     132    −(不明)  穀 物 合計    752     920 1,719 ────────────────────────────────── (注)資料: 中国統計年鑑、中国海関統計

2年連続で農業重視の経済政策

 中国の糧食不足問題については、 国の内外で既に大きな論議が展開されている。 こうした中、 食糧需給を重点国家政策と考える中国政府は、 生産・流通対策に重 大な関心を示し、 既に、 マクロの経済政策に反映させている。  昨年12年の中央経済工作会議 (次年度のマクロ経済政策を討議する会議) では、 今年度の重要経済政策の中に、 農業のテコ入れが盛り込まれた。 昨年も農業振興、 農業投資促進策が重点事項として盛り込まれており、 2年連続で農業重視が経済 政策の柱となっている。 その他にも穀物関連事項としては、 (1) 農地の他用途 への 「流出」 の防止、 (2) 治水、 土壌保全、 緑化対策、 (3) 先物取引市場の整 備、 (4) 流通の近代化・合理化を通じてのロスの縮減等の各種の対策が打ちだ されている。

政策選択と実行力に懸かる自給の維持

 中国は、 市場経済を追求する国家政策の下でも食糧自給方針を堅持しているが、 その2000年の糧食の生産目標は5億トンである。 したがって、 目標達成には、 今 後、 年平均約800万トンの増産を達成しなければならない。  昨年、 農業部農村経済研究センターが、 日中共同研究でまとめた予測では、 2000年の不足量を約2千4百万トンと推計している。 これは、 政策判断を加えな い、 いわば自然体での需給推計であるが、 同研究所では不足を埋めるための政策 選択を併せて提言している。 したがって、 現在百家争鳴となっている中国の食糧 問題は、 つまるところ、 政府の政策選択とその実行力の如何に懸かっているとい うことができる。
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