豪州の牛肉の需給動向


◇絵でみる需給動向◇

○肉牛の価格動向



● 肉牛価格が下げ止まり


 豪州の肉牛価格は、 ともに重要輸出市場である米国の肉牛生産増や日本での米 国産牛肉との競争の激化等を反映して、 94年半ば以降、 ほぼ値下がり傾向で推移 してきた。 特に、 今年の2月以降は、 指標となる全タイプ (米国向け加工用経産 牛 (枝肉重量200〜260kgのもの)、 日本向け肥育牛 (同300〜400kgの大型去勢牛)、 韓国向け肥育牛 (同260〜300kgの中・大型去勢牛)、 および国内向けの若齢牛(同 200kg以下) ) の肉牛価格が80年代前半の水準まで急落した。 しかしながら、 こ の価格低迷も、 4月以降は底入れ感を示す展開となり、 6月に入ってからは上昇 気運も見え始めた。

● 6月以降は上昇基調


 肉牛価格は、 6月に入ると全タイプで上昇傾向を示し、 7月第1週 (速報値) には、 ほぼ3月中旬の水準にまで回復した。 その価格水準を前年同週比でみると、 米国向け加工用経産牛が−21. 3%、 日本向け肥育牛が−32. 4%、 韓国向け肥育 牛が−30. 7%、 また、 国内向けの若齢牛では−27. 5%となった。 この前年比を、 価格の底となった5月第1週の状況と比較してみると、 それぞれ、 −34. 7%、 −35. 7%、 −35. 6%及び−37. 0%と低落率はさらに大きくなっており、 その 動向からも、 肉牛価格は回復基調に乗り始めたとみることができよう。  価格上昇の背景として、 豪州食肉畜産公社 (AMLC) は、 豪州南・西部の適度な 降雨により生産者の牛保留意欲が出てきたこと、 米国産牛肉の対日オファー価格 の上昇等を挙げている。 しかしながら、 肉牛価格低落の最大の要因と目される米 国内の牛肉生産は依然、 高水準を保っており、 かつ、 日本市場での米国との競争 は依然として激しい状況にあり、 予断を許さない状況となっている。

● 新たなキャンペーンによる国内販売の強化


 価格の上昇気運が見え始めたとは言え、 新機軸のマーケティング戦略が立てら れ奏功しない限り、 中期的には、 日本及び米国市場での豪州産牛肉の本格的な巻 き返しが起きるとは考えにくい面がある。  こうした中、 AMLCは、 グラウンドビーフに焦点を当てた、 新たな国内販促キャ ンペーンを7月上旬から開始した。 これは従来、 ステーキ中心であった国内の牛 肉消費体系に、 相対的に消費が少なかったグラウンドビーフを組み入れることに より、 大幅な牛肉需要増を狙ったものである。  この国内マーケティングの強化が、 海外市場での地盤沈下をいかにカバーし、 肉牛価格にどのように反映されていくのかが注目される。
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