EUの牛肉の需給動向


◇絵でみる需給動向◇

○BSE問題の発生で介入在庫が再び増加



● 4月以降6回の介入発動


 EU当局は、 4月以来、 計6回にわたる牛肉の介入買入を実施し、 その累計買 入数量は、 6月末までに18万2千トンに達した。 今回の一連の介入買入は、 牛海 綿状脳症 (BSE) 問題の影響で牛肉価格が大幅に下落したことを背景に発動され たもので、 EUによるBSE関連対策の一つとして実施された。  介入買入は、 EU共通農業政策の大改革 (93年度から実施) 以来のEU委員会 の制度運用方針を反映して、 93年後半以降実施されておらず、 その在庫量は、 92 年後半の1百万トン台をピークに一貫して減少していた。 96年2月末時点ではわ ずか8千トンまでに減少し、 3月の放出により在庫は一掃される予定となってい た。  しかし、 今回の一連の介入発動により、 状況は一変し、 現在の介入在庫量は、 94年10月の水準にまで戻ることとなった。

● 消費減退で価格の低迷続く


 EU域内の牛肉消費は、 現在も減退が続いているとされ、 アイルランド食料ボ ードの調査によれば、 3月以前の消費水準と比較して、 フランス、 ドイツ、 イタ リア、 アイルランドなどでは3割以上、 他の加盟国でも1割前後減少していると される。  牛肉価格は、 このような著しい需要の減少を反映し、 3月下旬以降、 ほぼすべ ての加盟国において、 一貫して下落傾向にある。

● 急がれる供給過剰対策


 EU委員会の予測では、 BSE問題による消費の停滞傾向は今後も続き、 96年を とおしてのEU域内消費量は、 前年を10%程度下回るとしている。 このため、 E Uの牛肉部門運営委員会では、 7月、 8月、 9月の各月に、 それぞれ介入買入を 実施することを既に予定しており、 業界内では、 96年中の買入数量は、 最終的に は50万トンに及ぶとの見方が強い。  現在、 EU委員会では、 肉牛の仕上げ体重の制限などの生産抑制策を検討して いると伝えられるが、 消費が予想どおり10%減少した場合には、 約80万トンもの 供給過剰が発生すると見込まれている。  また、 牛肉の域外への補助金付き輸出は、 近年、 過剰傾向で推移してきた需給 の調節に大きな役割を果たしてきたが、 ガット・ウルグアイラウンド (UR) 合意 では、 95年の111万9千トンからスタートして、 毎年6万トンづつ削減すること が約束されている。 このため、 中心的な輸出国であるアイルランドなどからは、 早くもUR合意の見直しを求める声が上がっている。  BSEの発症や伝播のメカニズムなどが未だ解明されず、 また、 その検疫、 撲滅 対策が確立途上にある現在、 牛肉消費が回復する見込みは薄く、 EUは、 早急に、 そしてより長期的な視野に立った需給対策の実施を迫られている。
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