EUの牛乳・乳製品の需給動向


◇絵でみる需給動向◇

○EUの飲用乳市場の動向



● 飲用乳の生産量が最も多いイギリス


 93年のEU (当時EC12カ国) の飲用乳 (バターミルクを含む) の生産量は、 約2, 636万トンであり、 87年と比べると、 6年間で約14%の伸びを示した。 しか しながら、 90年代に入ってからは、 その伸びは停滞しており、 91年からの2年間 では、 約0. 9%の増加にとどまっている。  生産量を国別にみると、 イギリスが最も多く、 EU全体の約4分の1を占める 約677万トンであり、 続いて、 ドイツ (約511万トン)、 フランス (約396万トン) となっている。  また、 飲用乳の種類別の生産割合では、 全脂乳が総生産量の50%を占め、 次い で、 低脂肪乳 (40%)、 脱脂乳 (8%)、 バターミルク (2%) となっている。

● 全脂乳の生産シェアが際立つアイルランド


 次に、 全脂乳の生産割合を国別にみると、 特に、 一人当たり飲用乳の消費量が 186. 3リットルと極めて高いアイルランドで、 80%以上 (約46万トン) の高率と なっている。 また、 一人当たりの飲用乳消費量は最も低いものの、 ギリシャでも 全脂乳が高い割合 (78%) を占めている。 一方、 全脂乳以外の種類別生産割合を みると、 低脂肪乳では、 フランスが80% (約317万トン) の高率となっており、 脱脂乳では、 スペインの17%が目立っている。

● 乳業メーカー、 市場拡大の打開策を模索


 EUの飲用乳生産が90年代に入ってから停滞している理由は、 二つある。 まず 一つには、 消費者の健康志向の高まりにより、 全飲用乳の半分のシェアを占める 全脂乳の消費の伸びが停滞していることによるものである。 実際に、 飲用乳の種 類別シェアは、 全脂乳から低脂肪乳、 脱脂乳にシフトしつつあり、 90年代の飲用 乳全体の消費の伸びをもたらしているのは、 低脂肪乳の増加によるところが大き い。 また、 もう一つは、 清涼飲料などの普及により、 若年層の消費者の牛乳離れ が進んでいることにある。  このような状況を打開するため、 各国の乳業メーカーは、 付加価値の高い飲用 乳の生産に乗り出している。 消費者の健康志向を反映したビタミン入りタイプの 飲用乳は、 都市を中心に好評を得ており、 また、 風味付き牛乳は、 既に若者の間 に浸透しつつある。 また、 乳業メーカーの間では、 90年代後半には、 消費者の健 康志向が一段落することとの見込みから、 全脂乳の生産を増加させることを検討 しているメーカーもある。 飲用乳の消費の多様化が進んでいる中で、 飲用乳の種 類別の生産動向が、 どのように変化していくかが注目されている。
元のページに戻る