● 6月の価格は前年より3割高
今年に入り堅調に推移していたEUの豚肉価格は、 5月に入ってさらに上昇し、
6月には歴史的な高水準に達した。
6月のEU平均の豚枝肉卸売価格 (市場参考価格、 以下同じ) は、 前月より9
%、 前年同月より32%と大幅に値上がりし、 100kg当たり180. 9ECUとなった。
加盟国別にみても、 6月の卸売価格は全15カ国で前年同月を上回ったほか、 フ
ィンランドを除く、 すべての加盟国で前年同月より2割以上の高値を記録した。
● 急激な需給ひっ迫が原因
この豚肉価格の高騰は、 短期間のうちに需給が著しくひっ迫したことによる。
まず、 供給サイドをみると、 93年末から続く繁殖用雌豚頭数の減少を背景に、
域内の肉豚生産量は、 前年水準を下回る傾向で推移していた。 こうした中で、 4
月以降は、 域内市場への主要な供給国であるデンマークなどの域外輸出が急増し、
域内供給の減少に拍車をかけたと伝えられている。
消費サイドでは、 牛海綿状脳症 (BSE) 問題の影響により、 多くの加盟国で、
牛肉消費が羊肉や豚肉へと移っており、 域内の豚肉消費量は、 現在、 増加傾向に
あるとされている。
中でも、 消費者の意識が 「非常に敏感」 とされ、 もともと豚肉の消費水準が高
いドイツでは、 BSE問題の影響が強く反映したとみられ、 同国の豚肉価格は、5月、
6月と他の加盟国の上昇率を超えて値上がりし、 域内最高値を記録した。
● 加工品分野で需要の伸び
このような、 BSE問題による消費者の牛肉離れは、 科学的な側面よりも、 より
心理的な側面が強く働いているとみられる。
イギリス食肉家畜委員会によれば、 牛肉消費の減少は、 ステーキ用などのポー
ションカットよりも、 ひき肉や加工製品に顕著に表れており、 ハンバーガーなど
加工需要の減少が著しく、 現在の豚肉需要は、 その代替として、 肩やバラなどの
部位に集中しているとしている。
これは、 より加工が進んだ製品やひき肉など、 視覚的に牛肉の姿を認知しにく
いものに対する、 消費者の否定的な意識を表したものと考えられている。
● 秋口までは高水準を維持か
96年のEU域内のと畜頭数は、 前年を約2%下回ると予測される一方で、 牛肉
から豚肉への消費のシフトは、 今後も域内の全体的傾向として続くものとみられ
ている。
このため、 少なくとも秋口までは、 EU域内の豚肉価格は、 かなりの高水準で
推移するとの見方が強い。 また、 業界関係者の多くは、 長期的にみても、 EU域
内の豚肉需給は、 97年まではひっ迫した状態で推移するとしている。
BSE問題とその影響が一段落し、 牛肉消費の回復が軌道に乗らない限り、 堅調
な豚肉市況は当分続きそうだ。
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