米国の豚肉の需給動向


◇絵でみる需給動向◇

○堅調な価格を支えるベーコン需要



● 肥育豚価格、 前年比3割高


 肥育豚価格 (主要5市場の平均価格) は、 このところ堅調に推移しており、 96 年上半期の平均では、 前年同期比30. 5%の値上がりとなっている (暫定値)。 こ の背景としては、 生産の減少 (96年上半期は4. 2%減)、 輸出の増加 (96年4月 までの累計で、 44. 8%増) などのほか、 国内におけるベーコン需要の拡大が指 摘されている。  ベーコンの原料となるベリー (ばら肉) の価格は、 この需要の増加の影響を反 映して、 昨年7月以降、 前年同月と比べて二ケタ以上の伸び率で推移しているが、 今年に入ってからも、 その勢いはまったく衰えず、 4月からは、 前年のほぼ2倍 の水準まで値上がりしている。

● NPPCが需要拡大に 「てこ入れ」


 ちなみに、 80年代から90年代の始めにかけて、 消費者は現在とは対照的に、 コ レステロールや脂肪の摂取を懸念して、 ベーコンを敬遠する傾向にあった。 この ため、 ベーコンは、 一時期、 市場関係者から豚肉業界全体の足を引っ張っている とまで言われていた。  こうした状況に対処するため、 肉豚取り引きや豚肉輸入に課せられるチェック オフ資金を使って、 豚肉の販売促進などを行う、 全米豚肉生産者協議会 (NPPC) の外食専門家グループは、 6年前からファストフード業界と協力して、 ベーコン を利用した新メニューの開発などのマーケティング活動を実施している。

● ベーコンを取り入れた商品に人気


 一方、 過去、 ベーコンの利用拡大に積極的ではなかったファストフード業界も、 NPPCの協力や、 その風味・味に対する消費者の評判の良さから、 多くの企業がベ ーコンを商品に取り入れるようになっている。 ベーコンを風味を増す素材として、 比較的早い時期から、 商品に取り入れているハーディーズ (ハンバーガー・チェ ーン) では、 人気メニューのすべてにベーコンが使われているという。 また、 同 業界最大手のマクドナルドも、 今年5月に発売した 「アーチ・デラックス・バー ガー」 にベーコンを取り入れ、 その販売規模の大きさから、 需要拡大にかなり貢 献した。  一方、 こうした動きは、 ハンバーガー・サンドウィッチ類に限らず、 ピザの分 野にもみられ、 例えば、 ピザハットでは 「ベーコン・チーズバーガー・ピザ」 と いう商品を打ち出している。

● 背景に消費者の志向の変化


 こうしたベーコン需要の増加の背景には、 食品に対する消費者の志向の変化が あるものとみられている。 現地業界紙によれば、 ここ数年、 消費者は、 摂取する 脂肪の量を気にするよりも、 食品の味・風味を重視する傾向が強くなっていると いう。 こうした変化を端的に反映した例として、 ファストフード業界で販売され ていた多くの低カロリー商品が、 このところ販売中止になっていることがある。 例えば、 マクドナルドは、 91年に発売した 「マックリーン・デラックス」 (赤身 分を増やして、 カロリーを抑えたもの) の販売を昨年の冬に取りやめた。 大手ハ ンバーガーチェーンの元最高経営責任者は、 「数年前には 「健康」 をマーケティ ング戦略の重要な要素と考えていたが、 それは誤りであった」 と述べている。  NPPCのラグルス会長も、 こうした傾向を踏まえて、 ベーコン需要増加の勢いは、 今後もしばらく続くとの強気の見通しを示している。
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