イギリス産牛関連製品の禁輸解除に前進 (EU)





● 解禁までの枠組みに合意


 イギリス産牛関連製品に対する禁輸措置の段階的解除に向けて全体的な枠組み をまとめた、 EU委員会提出の政策案 (ポジションペーパー) が、 6月22日に終了 したEU首脳会議において合意された。 これに伴い、 1カ月に及んだイギリスのEU 業務非協力政策 (議決事項における拒否権の行使など) もようやく撤回された。  なお、 今回の首脳会議では、 同時に、 肉牛価格の低迷に苦しむ生産者に対する 総額8億5千万ECU (約1, 133億円) の所得補償措置に合意した。 この内容は、 5億8, 100万ECUを現行の肉牛特別奨励金等に上乗せし、 残りの2億6, 900万ECU は、 各国の裁量の下で、 市況への打撃の影響に応じて支払わられるといったもの である。

● イギリスのBSE対策の実施が前提


 実際の禁輸措置の解除にあたっては、 第一に、 イギリス政府が一層の牛海綿状 脳症 (BSE) の撲滅および検疫対策を講じることが前提となる。 段階的に区分さ れた対象品目ごとに、 イギリスが対策実施状況についてのワーキングペーパーを とりまとめ常設獣医委員等、 EUの三つの専門委員会においてこれが検討される。  次いで、 これら専門委員会での意見を踏まえた上で、 EUの正式な意志決定プロ セスを経て制定される規則等に基づき、 実行に移されることとなる。

● 個体管理やとう汰などの対策を強化


 禁輸の解除に向けて、 イギリスが求められる措置としては、 1) BSE伝播の可能 性のある牛のとう汰、 2) 公的機関の管理下での牛個体登録と移動記録制度の導 入、 3) 飼料工場および農家からの肉骨粉の撤去、 ならびに関連施設や機具など の洗浄に関する規則の制定、 4) 30カ月齢以上の牛の処理計画の効果的な実施、 5) と体からの特定牛内臓の除去方法の改善、 などが挙げられている。  また、 対象品目については、 BSE清浄群 (肉骨粉が給与された恐れのないグラ スフェッドで、 BSEの罹病歴のない牛群が考えられている) の生体および牛肉、 受精卵、 特定期日以降に生まれた牛、 30カ月齢以下の牛の肉、 などに区分されて いるが、 優先順位はなく、 今後それぞれについての禁輸解除が検討されることと なる。  なお、 それらの項目に関する具体的な定義や条件、 処理手続きなどの細かな規 則や取り決めは、 EU委員会ならびに上記3委員会で、 今後、 詳細に煮詰められる ことになる。

● イギリス側は歓迎するも、 具体的な日程は不明


 この合意に伴い、 イギリスのEUにおけるあり方まで問われることになった、BSE をめぐる対他加盟国との政治的な対立も、 約1カ月を経て一応の決着をみる形と なった。  イギリスのメージャー首相は、 今回の首脳会議での合意を評価し、 今年11月ま でには、 ほとんどの禁輸措置が解除されるとの見通しを語っているが、 前述のと おり、 解禁までの日程や、 対象品目の検討順位など、 具体的な処理案はまったく 提示されていない。  また、 EU関係者は、 禁輸解除の決定は、 あくまで科学的な根拠に基づくべきで あると強調しており、 今後の取り組みの方向づけからみても、 現時点で解禁日程 を予測することは困難な状況となっている。  したがって、 メージャー首相の目論見どおり、 解禁プロセスが進行する保証は どこにもなく、 メージャー発言は、 イギリス国内でも批判が高まった対EU非協力 政策を終結するにあたり、 一応の成果をあげたものとして、 議会が国民にアピー ルしたにすぎないものと判断される。
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