チーズの輸出ライセンス発行を凍結 (EU)





● UR合意遵守のための措置


 EU委員会は、 酪農・乳製品の市場年度末である6月末を前に、 4月下旬から、 チーズの補助金付き輸出について、 そのライセンスの発行を凍結する措置を実行 した。 これは、 ガット・ウルグアイラウンド (UR合意) に基づく輸出補助金の削 減約束 (年次別の削減値を約束) を履行するための措置の一つとみられる。  EUは、 UR合意で、 チーズの輸出補助金は、 91年、 92年平均をベースとして2000 年までの間に、 支出金額では36%、 対象数量では21%の削減を合意した。 この合 意に基づく95年度のチーズの補助金付き輸出数量の上限は、 EU旧12カ国で40万7 千トンとなっている。 そのために、 EU委員会は、 95年度の開始以来、 UR合意をに らみながら、 チーズの輸出ライセンスを発行していたと思われるが、 このまま補 助金付き輸出を継続させた場合には、 UR合意に基づく削減約束を達成できないと 判断して、 この措置を取ったものと考えられる。  この輸出ライセンス凍結措置は、 UR合意の約束の履行を可能にする目的で、 EU が新たに制定した補助金付き輸出制度に関する管理規則であるが、 総輸出申請数 量あるいはそれに係る補助金総額が、 UR合意に基づく許容範囲を超過する恐れが ある場合に、 発動することができるとされている。  また、 輸出ライセンスの発行に当たり、 UR合意に基づく削減約束を達成できな い恐れがある場合には、 一定の削減係数を用いて、 申請数量をカットすることが 制度上可能となっている。 なお、 輸出業者はライセンスを申請するに当たり、 保 証金をつまなければならないが、 適用される削減係数が一定率を下回る場合、 輸 出を取り止める業者は、 保証金を失うことなく申請を撤回できることとなってい る。 従来、 この措置は削減係数が0. 8以下の場合に適用されるが、 5月末には、 これを0. 4以下に引き下げられた。 この措置は、 輸出ライセンスの申請が殺到す ることを未然に防止するために取られたものと思われる。

● 輸出補助金単価の引き下げも実施


 一方、 EU委員会は、 96年に入り、 チーズの輸出補助金の単価を、 11回にわたり 引き下げた。 特に、 そのうちの6回は、 チーズのライセンス凍結措置と並行する 形で、 4月以降に実施された。 この結果、 96年6月末現在の補助金単価は、 以下 の表のとおりとなっている。 チーズの輸出補助金単価 (単位:EUC/100s) ──────────────────────── 品 目 95年7月末 96年6月末 引き下げ率(%) ──────────────────────── チェダー 133.36 111.62 16 ゴーダ 118.98 90.00 24 エダム 118.98 82.00 31 ────────────────────────  このことについて、 関係者は、 この1年間で2割〜3割もの大幅な削減が行わ れたことに驚きを隠せないでいる。 また、 ノルウェーやスイス向けなど、 特定地 域向けの輸出補助金を撤廃する動きも進行している。  UR合意に基づく約束の履行は、 7月から実施2年目に入るが、 輸出補助金の金 額および対象数量ベースの削減は年次を追って、 段階的に実行されるため、 EU委 員会は、 ますます厳しい管理・運営を迫られると思われる。
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