豚肉部門、 生産流通構造の改善合理化を推進 (中国)





● 豚肉卸売価格、 昨年来の低迷が続く


 豚肉は食肉生産の約7割を占める畜産の基幹部門であるが、 6月上旬の代表的 な産地、 消費地における豚肉卸売価格は、 昨年の最安値時期に比べると次のとお りとなっている。 <産地/消費地の卸売価格比較>  ──────────────────────────────────── 市場名 品  目  96年6月5/7日  95年7月20/21 変化率  ────────────────────────────────────    (元/トン)   (元/トン)   (%) 成都肉類卸売市場 冷凍枝肉 8,600 (116円/kg)   8,600   ±0.0 冷凍部分肉 13,000 (176円/kg)  13,000   ±0.0  上海肉類卸売市場 冷凍枝肉 8,470 (114円/kg)   9,000   -5.9 冷蔵枝肉 10,107 (136円/kg)  9,897   +2.1  ──────────────────────────────────── (注)1 資料:「肉禽蛋信息」 2 成都(四川省):代表的な豚肉産地 上海:中国最大の都市  ────────────────────────────────────  上表からは、 最近の豚肉卸売価格は、 昨年の最安値の時期とほぼ同じか、 やや 低い水準となっており、 昨年来の卸売価格の低迷が、 依然として続いていること が知られる。  なお、 需要動向の変化としては次の点に注目すべきである。 すなわち、 経済改 革の進行により所得が急伸した大都会では、 消費者の品質志向の高まりや販売事 情の変化 (冷蔵ショーケースの普及が始まる) から、 チルド商品の人気が高まっ ているといわれている。 上表では、 改革先進地域で最大人口を有する上海市場で 冷蔵枝肉が上昇しているが、 これは、 そうした先進地域の需要傾向を反映したも のとみることができる。 なお、 上海市場では、 この1年足らずで、 冷蔵/冷凍品 格差が、 10%から19%強へと急拡大していることになる。

● 根強い増頭意欲が生産過剰継続の背景に


 近年、 豚肉生産は、 経済発展が著しい都市や沿海部を中心に、 所得増加による 好調な需要に支えられて、 堅調な市況展開の下で順調に伸びてきた。 しかしなが ら、 昨年は、 一転して生産過剰により市況が軟化した。 特に、 季節的に消費盛り 上げ要素が乏しい夏期に入ってから、 その傾向が強くなり、 7月下旬にかけては 価格低落傾向が顕著となった。 その後は、 政府指導の下に実施された調整保管の 効果が現れたことや、 秋以降の季節的な消費回復軌道により価格はやや好転した が、年明け以降は再び 「息切れ」 を示した。 最大の需要期である春節 (中国正月: 2月) 前にも、 価格はさしたる回復を示さず、 その後も類似の市況展開の中で 「底ばい」 傾向が続いている。  こうした市況展開の原因は、 消費の伸び率に頭打ち傾向が出る中で、 依然とし て生産過剰が続いていることにあるとみられる。 今年3月に公表された国家統計 局の公報では、 95年末の総豚飼養頭数は4億4千百14万頭となり、 前年比+6. 5 %と、 依然として根強い増頭傾向にあることが示された。 「繁殖用母豚」 といっ た、 その後を見通すための細目データは得られないが、 前年/前々年比が+5. 5 %であったことからすると、 これは強い増頭意欲が示されていると理解して差し 支えないであろう。   <近年の豚飼養・豚肉生産動向> ─────────────────────────────────── 項 目 (単  位) 95年 (前年比 %) 94年 (前年比 %) 93年  ─────────────────────────────────── 豚飼養頭数(万頭:年末) 44,141 (+ 6.5) 41,462 (+ 5.5) 39,300 豚肉生産量(万トン:A) na 3,205 (+12.3) 2,854 食肉生産量(万トン:B) 5,000 (+11.1) 4,499 (+17.1) 3,842  (豚肉シェア:A/B=%) na 71.2 74.3 ─────────────────────────────────── (注)1 資料:中国統計年鑑:naは該当数値が得られないものである 2 食肉生産量には、豚、牛、羊、家きん、兎肉の合計である ───────────────────────────────────

● 生産流通合理化を通じて市場健全化への取り組み


 農民の所得向上が求められている状況下での、 こうした市況の低迷に対処して、 国内貿易部並びに傘下中央・地方企業群は、 今年は、 昨年以上に調整保管を拡大 強化して、 価格支持に努める姿勢を鮮明にしている。 また、 それと並行して、 国 内貿易部は、 (1) 生産の合理化・集約化や (2) 流通市場の整備・近代化、 また (3) 需要家と生産者の結合強化等の政策を、 強力に推進している。 これは、 生産 /流通の総合的構造改革を通じて、 (1) 需給・価格政策の効率化や (2) 品質規 格の向上を図ると共に、 (3) 流通市場の近代化を通じて、 (4) 需要動向が的確に 生産に反映する体制づくりを狙いとしたものである。 なお、 肉豚豚肉市場の合理 化、 健全化を目指すその具体的な手法は、 次の主要項目から構成されている。 1) 豚肉生産の基幹をなす各地域の肉連廠 (食肉生産コンビナート) の近代化と 経営力の強化 2) 定点と畜 (拠点的なと畜施設での処理) の普及推進 ●地域の拠点となる、 近代的なと畜・処理施設へのと畜の集中を狙いとする。 3) 保管・備蓄用施設の基準向上と指定登録 4) 管理・衛生基準の向上 ●健全な生産環境や品質衛生水準の向上と商品の信頼性を高める目的で、 定点と 畜における管理・品質衛生に関する規定を制定 (96年4月8日発布) 5) 卸売市場の近代化・合理化、 新設 ●取引・決済、 情報開示の電算化や、 卸売り市場の内外での流通業者や需要家の 組織化 6) 多数の大型の近代的な養豚・豚肉生産基地の建設
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