日本からの鶏卵輸出が定着 (シンガポール)





 シンガポールでは、 1日当たり約300万個の鶏卵の需要があるが、 このうち3

分の1は国内生産で賄い、 残りの大部分は隣国マレーシアから輸入している。 こ

うした中で、 去る5月中旬、 日本の鶏卵が、 長駆、 シンガポールまで輸出されて

いることが紹介されている。 



● 青森が 「先駆者」


 日本からシンガポールに鶏卵を輸出しているのは、 青森県の養鶏場である。 そ して、 その鶏卵を現地で販売しているのは、 日系デパートの地下に店舗を構える 食品スーパーである。  同社は、 シンガポールに展開している、 日本人向け食品を多く取り扱うスーパ ーの1つであり、 青森から鮮度のよい魚を空輸するルートを確立している点で、 現地でも抜きん出た存在となっており、 このことが、 鶏卵にも生かされたとみら れる。

● ようやく輸入許可を獲得


 同社は、 店舗における販売以外にも、 約3千人の会員にカタログを配布し、 注 文商品の宅配サービスを行っている。 日本産の鶏卵に対する会員からの購入希望 は以前からあったが、 具体化したのは昨年10月、 シンガポールで販売促進フェア が行われたことを契機としたものであった。 その後、 同国の国家開発省第一次産品局 (PPD) に5回も輸入申請書類が提出 された結果、 今年4月になってようやく輸入が認可された。 ただし、 輸入は許可 されたものの、 検疫のため、 輸入の際に1箱 (180個入り) を抜き取ることが条 件とされた。

● 「新鮮・安全」 に価値を見出す


 本年5月中旬の初売りの日、 同スーパーの前には長蛇の行列ができ、 日本から の鶏卵400パックはたちまち売り切れた。 それ以後、 1回の販売数量を900パック に増やし、 週1回、 定期的に売り出している。 なお、 購入者は、 現地在住の日本 人が100%である。 シンガポール在住の日本人は約3万人であるが、 日本からの 鶏卵に対する需要は、 ほぼ定着したと考えられる。  販売側は、 その人気の背景として、 「生卵で食べられるためというよりは、 新 鮮さと安全性に価値を認めた結果ではないか」 と指摘している。 例えば、 日本産 の鶏卵は血ぱんや肉はんのあるものが除去されており安心感があるが、 現地で購 入した赤玉の血ぱんなどに驚かされる場合も少なくない。

● 価格低減と鮮度保持が課題


 ただし、 日本産輸入鶏卵にも問題がないわけではない。 問題の1つは、 MSサイ ズ6個入りで5. 8ドル (約450円) もする価格である。 地元産が10個入り1パッ ク1. 5〜2ドルであるから、 現地の人はまず購入しない。 1, 000円/kgを超える 輸送コストと、 少量ゆえに割増しとなる経費によって、 どうしてもこの価格にな るとのことである。  もう1つの問題は、 鮮度の維持にある。 同社では、 青森で水曜日に生産された 鶏卵を空輸して、 金曜日の朝からシンガポールで売り出している。 生産者側は、 2週間程度は品質が保持できると保証しているとのことであるが、 同社では、 週 2回販売にして1回当たりの輸送数量を減らすことにより、 より鮮度を向上させ ることを検討している。
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