食肉衛生検査を強化する規則改正を発表 (米国)





● 約90年ぶりの変更で、 より科学的な検査を実施


 クリントン大統領は、 7月6日、 サルモネラ菌、 病原性大腸菌 「O157」 など に汚染された食肉による食中毒の発生を防止するため、 連邦食肉衛生検査規則を 変更することを発表した。  今回の変更の主な特徴は、 約90年前に導入された、 においや外観などのチェッ クに基づく従来の検査方法を、 より科学的な方法に置き換えることや、 と畜・加 工処理場に対し、 食肉に付着する有害なバクテリアを減らすよう義務付けたとこ ろにある。  なお、 この新しい検査、 衛生基準は、 全米の約6, 200の連邦検査実施工場を対 象としているが、 今後、 同様の基準が、 州政府検査実施工場や海外の米国向け輸 出工場にも適用されることになっている。

● HACCPや有害バクテリアのテストなどを実施


 新規則の主要なポイントとしては、 以下のものがある。 (1) 大腸菌及びサルモネラ菌に関する検査の義務付け  大腸菌 (一般的なもの) については、 と畜・加工処理場は、 定期的に枝肉の微 生物テストによって、 菌が存在していないことを検査して、 サルモネラ菌や 「O 157」 などの汚染源ともなる、 家畜のふんの付着を防ぐための処理手続きが、 効 果的に行われているか否かをチェックしなければならない。  一方、 サルモネラ菌についても、 各工場は科学的な検査を実施し、 感染による 問題が生じないようにする義務を負う。 (2) 危害分析危機管理点方式 (HACCP) の導入  と畜・加工処理場は、 独自のHACCP計画を作成し、 実行しなければならない。 当該計画の効果については、 各工場が証明する義務を負い、 米農務省 (USDA) の 食品安全検査局 (FSIS) の検査官が継続的にチェックを行う。 (3) 食肉生産・加工過程での衛生計画 (SOP) の作成  と畜・加工処理場は、 HACCP計画の基礎となる、 食肉生産・加工過程における 全般的な衛生手続きに関する計画を作成しなければならない。  なお、 これらの改正点については、 サルモネラ菌の検査を手始めに、 SOPと大 腸菌の検査、 HACCPと順次実施されていくものとみられているが、 小規模パッカ ーについては、 移行期間をかなり長期に設定するなどの配慮が施されている。

● ほぼ3年の歳月を要した最終規則


 93年に発生した 「O157」 による食肉を媒体とした食中毒事件をきっかけとし て、 クリントン政権は、 食肉衛生検査規則の改正に着手し、 95年2月には改正案 を官報に掲載した。 しかし、 関係業界から 「小規模パッカーへの配慮が欠けてい る」 等の強い反対意見が出されたことにより、 同規則の改正は、 その後行き詰ま りをみせていた。  このため、 USDAは、 事態の打開を目指して、 改正案の再検討を決定し、 公聴会 の開催、 コメントの募集など、 外部からの意見を積極的に聴取していたが、 今回 は、 これらの努力が実り、 ようやく最終的な改正規則の発表に至ったものである。 (なお、 同改正規則は、 今後の官報公示を経て、 実行に移される。 )
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