干ばつ被害救済のため緊急対策を実施 (米国)





● 40万トンの放出による売却収入で飼料購入費を補助


 クリントン大統領は、 7月1日、 干ばつの被害に見舞われているテキサス州な どの南西部地域等に対して国家緊急事態を宣言した。 これを受けて米農務省 (USDA) は、 それらの地域で牧草地に被害を受け、 飼料コストの増大に苦しむ肉牛生産者 などへの救済策を今後数週間で実施すると発表した。  その内容は、 USDAの商品金融公社 (CCC) が、 備蓄している災害対策用の飼料 穀物4千5百万ブッシェル (約111万トン) のうち、 その約3分の1に相当する 1千6百万ブッシェル (約40万トン) を入札などの手段で売り渡すとともに、 こ れにより見込まれる収入 (推定4千万ドル、 約44億円) の大半を、 被害に見舞わ れた畜産農家の90日間分に相当する飼料購入経費の補助金に充てるというもので ある。

● 補助対象農家の条件を設定


 飼料購入経費の補助の対象となる畜産農家については、 1) 干ばつにより、 通 常の年の飼料作物生産量に対して、 40%以上の損失があった郡に属していること、 2) 畜産農家自身も40%以上の損失があり、 また、 緊急事態に対処するのに十分 な飼料の蓄えを有していないこと、 3) 農業生産に従事しており、 年収の10%以 上を穀物生産と家畜生産により得ていること、 などの条件が定められている。

● 市況を冷やす効果は期待薄


 今回、 飼料穀物の放出が決定された背景には、 飼料穀物価格の高騰に歯止めを かけることを通じて、 干ばつの被害を受けた地域の農家のみならず、 飼料コスト の増大で苦境に立つ全米の畜産農家を支援する意図があったとみられる。 しかし、 市場関係者の間では、 放出数量が少なすぎるため、 市況を冷やす効果はほとんど ないものとみられている。 むしろ、 大統領が鳴り物入りで緊急対策を発表したこ とから、 穀物市場の非常事態を、 一層際立たせることになったとの指摘すらある。 なお、 USDAは、 放出数量を災害対策用備蓄の3分の1程度にとどめた理由につ いて、 今後の災害対策措置に備えて、 一定数量の備蓄を維持することが必要なた めと説明している。
元のページに戻る