台湾の豚肉の需給動向


◇絵でみる需給動向◇

○肉豚需給動向



● 5月に入って肉豚価格が急騰


 3月下旬に下降に転じた肉豚卸売価格 (全国22市場の平均取引価格) は、 4月 に入ってからは、 次第に落ち着いた動きとなり、 結果的に4月平均価格は、 肉豚 100kg当り6, 168元 (対前年比107. 1%‥1元=約3. 9円) となった (対前月比 +0. 5%)。 しかしながら、 5月に入ってからは状況は一変して大幅な上昇に転 じ、 下旬には、 殆どの市場で7, 000元前後に張りついている。 関係者の間では、 この 「急転」 の背景には、 生産量の約3割に相当するシェアを占める、 対日輸出 動向への 「思惑」 が作用していると指摘されている。

● 輸出業者の買い付け増が高騰の要因


 台湾の豚肉輸出業者は、 わが国の輸入緊急措置 (SG) の発動を回避することを 目的として、 去る3月末に、 4・5月にも輸出自主規制を実施することを決定し た。 しかしながら、 4月の輸入基準価格の引き下げに伴って、 わが国の輸入は急 増し、 同月の豚肉輸入量は、 過去最高の約13万4千トンを記録した。 第1四半期 のSGトリガー数量は約15万2千トンであり、 4月末の時点ですでに 「スキ間」 が 1万8千トンにまで縮小していることから、 業界関係者は7月からのSG発動の可 能性を念頭に置いているとされる。  現在、 肉豚価格が高値をつけている背景としては、 SG発動を見越して台湾の輸 出業者が、 それまでの間に対日輸出を増やすために、 一転して肉豚の買い付けを 増やしていることが取りざたされている。 なお、 輸出業者の買い付け動向を知る うえでの指標となる全国22市場の取引頭数は、 5月は約67万頭と、 対前月比13. 1%増となっており、 このことを裏付ける傾向を示している。  また、 高値の付加的要因としては、 大部分を輸入に頼る飼料の価格が高騰を続 けているといったコスト要因や、 話題となった狂牛病への懸念から、 食肉需要が 牛肉から豚肉へ一部シフトしたことなども指摘されている。

● 肉豚価格の高騰が生産者・消費者双方に影響


 一方、 生産サイドから見ると、 一貫経営における肉豚の生産コストが一頭約 4, 600元 ( 「工商時報」 による) であることから、 現在の肉豚価格では、 その利 益率が約50%もの高水準となる。 こうした強い生産刺激要素を懸念して、 台湾省 政府農林庁は、 養豚業者が目先の利潤追及に走って、 安易な増頭を行わないよう、 強く呼びかけている。  さらに、 この肉豚価格の急上昇は、 豚肉の国内小売価格にも、 すでに影響を与 えつつある。 台湾では、 従来、 肉豚価格が上昇しても、 長期にわたって小売り価 格に反映されない傾向が強かった。 しかし、 今回、 小売価格の値上げ幅はすでに 10〜20%にも及んでおり、 現地報道では、 従来の高値記録を更新したと伝えられ ている。
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